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作品一覧 2024/04/25更新 日経BPクラシックス 資本主義、社会主義、民主主義 1 試し読み フォロー 日経BPクラシックス 資本主義、社会主義、民主主義 2 試し読み フォロー 1~2件目 / 2件<<<1・・・・・・・・・>>> ヨーゼフ・シュンペーターの作品をすべて見る
ユーザーレビュー 日経BPクラシックス 資本主義、社会主義、民主主義 1 ヨーゼフ・シュンペーター / 大野一 シュンペーターといえば「創造的破壊」の概念を提唱した人物として日本人にもなじみの深い経済学者ですが、その概念を紹介したのが本書になります。本書は第二次世界大戦中の1942年に発刊された本ということで、そのあたりの背景を考慮しながら読み進めると良いかと思います。また本書では、序文としてシュンペーター伝...続きを読むを書いているトーマス・マクロウによる紹介文が掲載されていますが、これは非常に良い。本編を読み進めるに当たっての素晴らしいガイドラインになっています。 上巻では第1部マルクス主義、第2部資本主義は存続できるか、第3部社会主義は機能するか、が収録されています。第1部では、マルクスの資本論簡潔に説明し、批判を加えていて、資本論になじみのない人でもマルクスの考えがよくわかるようになっています。第2部は本書の本丸ともいうべきパートで、冒頭に「資本主義は存続できるか。いや、そうは思えない」という断言からはじまっていて、読者にショックを与えています。そして中身を読み進めると、シュンペーター氏がいかに現実世界を認識しているか、人間の心理や非合理的な行動、不確実性への企業の対処方法などを鋭く分析していて、とても感銘を受けました。経済学者で理論だけをやっている人は、実業界の人間からすると、「まったく世の中をわかっていない」という評価が与えられることも多いですが、シュンペーター氏は実業界の人間以上に経済や経営の奥深くまで理解しているという印象を受けました。シュンペーター氏の予言は外れた、とかこの部分はまちがっている、と批判する人もありますが、本書からいかに多くの気づきを得られるかの方がよほど大事で、私からすれば間違いの箇所を批判するより、多くの気づきを得させてくれた感謝の方が大きいです。 第3部の社会主義については、正直あまり感銘を受けませんでしたが、その理由として定義している社会主義の範囲が広いこと(現実世界でもそうですが)、またwhat if的な記述が多く、ほとんどフィクション的な印象を受けてしまいました。ただそれこそがシュンペーターの狙いかもしれない(つまり社会主義はフィクションのようなものだ)とすると、それはそれでやはりシュンペーターのすごさではあると思います。資本主義の将来を考える人にとって本書は必読書だと思います。 Posted by ブクログ 日経BPクラシックス 資本主義、社会主義、民主主義 2 ヨーゼフ・シュンペーター / 大野一 第2巻では「第4部:社会主義と民主主義」、「第5部:社会主義政党の略史」に加えて、戦後のその後の展開へのコメントとして、「イギリス第三版への序文(1949年)」と「社会主義への行進」というシュンペーターが亡くなる直前の(不完全な)論文が収録されていました。 率直な感想はというと、第1巻での資本主義の...続きを読む深い洞察パートに加えると、第4部、第5部はやや物足りない感がありました。特に民主主義に関しては歯切れの悪さというか、分析の切れ味がどうしても資本主義に対するのに比べれば悪いなという印象でした。その意味で予想外だったのが第5部がとても面白かったこと。冒頭には自分は専門家ではないが、と断っていますが、そこらへんのジャーナリストよりはずいぶん読者をひきつける文章だったと思いますし、とても勉強になりました。第1巻よりはボリュームが少ないのであっという間に読めると思います。 Posted by ブクログ 日経BPクラシックス 資本主義、社会主義、民主主義 1 ヨーゼフ・シュンペーター / 大野一 「資本主義はその成功ゆえに失敗する」マルクスの向こうを張ったこの意表を突くテーゼであまりに有名な本書は、処女作『 理論経済学の本質と主要内容(岩波文庫) 』でワルラスの一般均衡理論を継承したシュンペーターが、『 経済発展の理論(岩波文庫) 』でイノベーションをキーにその動学化を図った後、自らの学問体...続きを読む系の総仕上げとして構想した長期の社会変動論である。第二次大戦後の高成長から低成長時代を迎える中で福祉国家化が進展し、シュンペーターの予想が一定の説得力を持ち得た時期もあった。しかし80年代に西側の保守政権によってレッセフェールが息を吹き返し、社会主義陣営の崩壊を経て、2000年代以降グローバル資本主義が猛威を振るうに至って次第に色褪せていった。 シュンペーターのイノベーション理論は、その理論的な華麗さにも拘らず、いやその華麗さゆえに現実を記述するモデルとして決して万能ではない。イノベーションはまさに「創造的破壊」であるがゆえに通常の経済循環過程からは生まれない。それは非連続な未来を直観した企業家によって循環の外部から唐突にもたらされる「新結合」である。企業の巨大化とともに所有と経営が分離し、官僚主義が蔓延する中で、企業家精神もイノベーションも枯渇するとシュンペーターは言う。だが企業を成長に導くのは天才的な企業家の「創造的破壊」ばかりとは限らない。アイデアを製品化し、市場を開拓する上で、組織にビルトインされたインクリメンタルなイノベーションが果たす役割も決して小さくない。シュンペーターの悲観論はこの点を見逃している。 もう一つシュンペーターが見落としていたのは、彼が生きた時代の制約もあるが、資本主義をグローバルに捉える視点だろう。資本主義は差異を導入することによって生き延びると言ったのは岩井克人だが、グローバルレベルでの労働力価格差が差異の源泉として存在し続ける限り、画期的なイノベーションがなくとも資本主義は安泰だ。それが壁に突き当たるとすれば、差異が喰い尽くされるまでグローバルな平準化が進むか、もしくは、それがもたらす国民経済の混乱に耐えきれず、国家が何らかの阻止行動に出るかのどちらかだろう。いずれにしてもシュンペーターが予想した資本主義の安楽死とはかなり違った道筋を辿るとみたほうがいい。 個人的に最も興味深く読んだのはシュンペーターの独占理論だ。完全競争市場で価格を所与とせざるを得ない企業には生産手段を戦略的に活用する余力は乏しく、独占による安定化がイノベーションを促すという。介入主義的な独禁政策に批判的なオーストリー学派らしい考え方だが、独占の最たるものと言える社会主義へのシュンペーターのニュートラルな立場の背景には、こうした独占の捉え方があるとみてよいだろう。 Posted by ブクログ 日経BPクラシックス 資本主義、社会主義、民主主義 2 ヨーゼフ・シュンペーター / 大野一 「民主主義とは、単に『統治する人を受け入れる機会、拒否する機会が市民にある』という意味にすぎない」(p109) なかなかドライな指摘ではあるが、民主主義の本質をしっかりと見据え、よりマシな政治を展望するまっとうな書といえる。エリート民主主義の本丸とみなされている本書だが、そういう看板を外して、現代...続きを読むの民主主義の現状を踏まえて読んでみると、実に有益だ。 あえて狭くとらえつつ、効果を最大化する戦略といえる。逆に理想を大きくして、現実を一ミリも前に進めない思想はダメだ。 Posted by ブクログ 日経BPクラシックス 資本主義、社会主義、民主主義 2 ヨーゼフ・シュンペーター / 大野一 1巻より続く 気づき ・マルクスは自分は決して真の民主主義の道から逸脱し ているわけではない。真の民主主義の息の根を止める 資本主義という毒ガスを除去しなければならないと宣 言しただろう ・民主主義は「市民による統治」と定義できるかもしれ ないが、「市民」と「統治」にはさまざまな概念があ ...続きを読む る ・結局のところ、民主主義の原理とは、競争を勝ち抜い て最大の支持を得た個人や集団に政権を委ねることを 意味するにすぎない。そうなれば民主的な手法のロジ ックでは多数決制度が肯定されるように思える ・有権者の選択はイデオロギー上「市民の声」と美化さ れているが、自発的なものではなく、作り上げられて いくものだ。それを作り上げることが民主的なプロセ スの本質的な要素といえる。争点に決着をつけるのは 有権者ではないが、議員を選ぶ際も、まったく自由な 状態で被選挙権者から選ぶわけではない。通常のケー スでは例外なく主導権は候補者にある。候補者は議員 のポストとそこに見え隠れする地元のリーダーシップ を手にしようと目論んでいるのであり、有権者にでき るのは「他の候補者の目論見よりはこちらの候補者の 目論見の方がよい」と受け入れるか、受け入れを拒否 することだけだ ・帝政はロシアの社会のパターンが生み出した体制であ り、イギリスの議会君主制やアメリカの民主共和制と 同様、実際には社会のパターンに適した体制であった ・ロシアの工業部門が有力な社会主義大衆政党を生み出 せなかった背景に資本主義の発展が大きく立ち遅れて いたという事情があったとすれば、アメリカの工業部 門が有力な社会主義大衆政党を生み出せなかった背景 には、資本主義が目まぐるしいスピードで発展してい たという事情があった ・民主主義の首相は手綱を握るだけで精一杯で行き先を 自分で自分で決められない騎手のようなものである 今日、民主主義と社会主義とどちらがよいのか、資本主義には限界がきているのではないかということが取りざたされているが歴史上特にヨーロッパ諸国でこんなに上記の主義が入り混じった複雑な時代があったとは勉強させられました。 Posted by ブクログ ヨーゼフ・シュンペーターのレビューをもっと見る