このところアルコール耐性がついてしまい、徐々に飲酒量が増加してきていることに危機感を覚えていたところ、この本を見つけ購入。おそらくは同種の本は山ほど出ているが、最新の情報を得ることは何につけても重要。
本書の特色は、まずヒポクラテスやガレノスから始まる肝臓の構造記述の歴史から始まること。この先人た
...続きを読むちの誤解と発見を紐解くイントロダクションのおかげで、我々一般人が抱く肝臓に対する臆見が徐々に取り除かれてゆく。
しかしこの肝臓、本書でも述べられる通り、心臓や胃などの単一機能臓器とは異なり多様な働きを担っているため、とてもその機能を一言で表現することはできない。いきおい記述が多面的になり一読しただけでは消化不良を起こしてしまう。
僕が気になるアルコール代謝との関係に絞ると、肝臓は空腹時つまりグリコーゲン枯渇時には脂肪酸を分解しATPを産生しているのだが、ここで使用される機構がアルコールの代謝にも使用されるため、空腹時に飲酒するとこの機構が脂肪酸分解によりテークアップされてしまい、アルコール代謝が進まず血中アルコール濃度が上がってしまう。またタンパク質を「新糖生」の働きにより分解しグリコーゲンを補おうとするので、筋肉が削られてしまうのだ。かといって、つまみ(炭水化物)を摂り過ぎてしまうと今度はグルコースが過剰となり、これがアルコール分解で忙しい「クレブス回路」により分解されず脂肪酸生成に回ってしまうため、中性脂肪が肝臓に蓄積され脂肪肝になってしまうという。
なんともうまくできているものだが、やはり高機能とはいえ肝臓に負担をかけ過ぎては良くないことが理詰めで理解できた。他にC型肝炎をめぐる逸話(故ライシャワー米駐日大使の輸血感染)なども興味深かった。