先ず、図鑑のようなサイズ。カラー写真付きで、詳しく解説がなされていて、商材としての奴隷、反乱、解放、統治、紛争と発展。そして文化としてのジャズやレゲエ、ラスタファリ、ネグリチュードなど幅広い。
制度化され、劣等性を刷り込まれた人種。人類は気候変動以降、狩猟から農耕生活へとシフトするが、新たな武力を
...続きを読む手に入れたものが支配し、公益の最大化を目的に規模の統治を求め始めた。アメリカではジム・クロウ法によって人種隔離が合法化され黒人差別が制度化され、1900年までにアフリカ大陸の90%はヨーロッパ諸国の領土となったが、奴隷売買は黒人に限った事では無かったが、黒人が最も扱いやすい環境だった。イスラム圏では、同じムスリムを奴隷にする事は禁じられていたし、カラードは見た目にも区別がし易い。
ムスリムの商人はアフリカで奴隷を買いアラビア半島に連れて高値で売って稼いだ。需要が高かったのは女性と子供の奴隷。ムスリムの男は女性を4人妻にできるが、愛人の奴隷はいくらでも持てた。宦官については、当時の去勢手術で10人中9人が命を落としていたから、非常に貴重で高く取引された。なお欧米とは違い、ムスリムでは奴隷の子は奴隷ではなかった。
15世紀になるとポルトガルの商船が西アフリカに到達し、砂金と奴隷を持ち帰った。続いて16世紀末にはオランダが交易拠点を築いた。商品の目玉は、こちらもアフリカ人奴隷。
1510年から1866年の間に、1200万人以上のアフリカ人が奴隷として南北アメリカに運ばれた。その内、生きて大西洋を渡れたのは1070万人。また、アメリカ南部では白人にレイプされた黒人奴隷の女性が産んだ子はムラートと呼ばれ、生まれつきの奴隷とされた。
1853年に出た人種不平等論、ジョゼフアルチュールド・ゴビノー。白色人種は卓越した知性ゆえに最上位であり、黒人の知性は非常に狭い範囲しか及ばないので再開だと論じた。混血は人種の純粋性を汚し文明の衰退につながる悪魔的な主張。アメリカのジョサイアノットが本書を英語に訳し、1856年に出版して奴隷制擁護の論陣を張った。ナチスのヒトラーはこれを根拠にユダヤ人やローマの根絶を正当化した。
現代にも奴隷はいて、人類は狡猾に構造的に弱者からの搾取を自らの生活サイクル、快楽報酬系のシステムに組み込んでいる。弱者女性を性産業へ、弱者男性を肉体労働の現場へ。非正規、派遣、アルバイトとして、まさに「ブラック」な労働を強いる。
黒人差別という地球規模のデフォルト設定。こうした既得権の放棄は、本当にゆっくり進む。金満が寿命で死に、二世三世と続く中で正義感を持つ個体が出現したり、社会運動に期待するが、グローバルサウスのように、搾取する側は気付いていない事も殆どだ。日々、改善を望む。