メアリー・アニングの話を絵本で初めて読んだとき、たしか、「なんだ化石を売っていたのか。ちょっと残念だな」という程度の認識しかなかったような気がする。
でも、この本を読むと頭をガツンガツンなぐられるというか、「そうやっていかなきゃ、暮らして行けなかったんだよっっ!!」ということが痛いほどわかる。とい
...続きを読むうかわからされる。かつてのアマチュアスポーツと同様、科学の研究にのめりこむことができたのは、アカデミズムの世界に受けいれられる家柄ももちろんだけど、何より経済的に余裕があって、困窮していないということなんだ。
メアリは正反対で、貧しい家具職人の娘。しかも父親は化石探しの際の事故がもとで大けがをし、さらに肺病になって長患いのすえに死んでしまう。
メアリはそういう厳しいなかで、けなげに耐えるのではなく、あちこちに怒りやいら立ちをぶつけながら、きわめてトゲだらけのイバラのように道を切りひらいていく。
そんなに貧しくても、困窮していても、化石を掘り、大昔の物言わぬ骨を見つけ出したかったメアリ。教育を受けられなくても科学というものに心引かれ、知性を追い求めたメアリ。名誉も賞賛も受けられなくても、それでも化石に惹かれ続けたメアリ。ものすごくとんがっててものすごく純粋な知的好奇心が、むき出しに描かれていて、胸がふるえた。
父親の死、母の早産、赤ん坊の死、メアリの初潮など、生と死のどろどろした部分も手加減しないで描かれている。そうすることで、身分から言っても、経済的余裕からも、性別も、学問とはほどとおいメアリが、世界で初めてイクチオサウルスの全身骨格を掘りだしたことのすごさがひしひしと伝わってくる。前半は、とんがりまくったメアリと格闘するようなガッツが必要なんだけど、それだけの甲斐がある本だった。