「パナウェーブはどう生まれたのか、どんな理由で活動していたのか」を外部の視点からしっかりと書き上げた読み応えのある本。
教義の説明も、一般常識を持った読者にも配慮しつつ、バカにもしない形で説明してあると思う。
教祖の女性が亡くなったことで距離を置いているけれども、教えを今も信じているという男性が
...続きを読む出てくる。世間話をするといたって知的な会話もできる。
私の父はパナウェーブとは別の某信仰宗教の一世信者だったが、まさにこの感じだ。ニュースや政治の解説はその歴史背景まで的確に知って答えられるので参考になる一方、メシア観とか魂の救済については一般とは全く別の信念を頑なに信じている。どうしてそうなるのか、とても不思議だ。
だから、パナウェーブの人たちが女性教祖に振り回される様は、私も両親が自分のところの宗教の方針にいちいち振り回されているのを見てきたのでよくわかる。
でも一方で、彼らの主張するスカラー波とか天使の事とかの教えはやっぱり滑稽に思える。だからこそ、自分がかつて生まれた別の宗教の滑稽さが、それにより相対化された。
なんの宗教も持たない人がこれを読んで「中学受験を押してくる進学塾って、ありもしない未来の不安を煽ってくる宗教に似てるよね」みたいに現実社会を相対化できるようになればいいなと願ってるんだけど、だいたい「やっぱりカルトは変だし怖いよねー」でどうせ終わっちゃうんだろうなって、残念な気持ちになる。
まあ中学受験の「救い」を信じてる人には信じさせとけばいいし、きっと描いたような結果にならなくても「でもあの受験のつらさがあったからこそ今がある」みたいに、信じたものを正しかったことにして行くしかないから、別にいいのか。