遠藤周作著「ルーアンの丘」を読んだのは、多分20年以上前…。内容も覚えていません。確かにフランソワーズさんのことは最後の方に書かれていた気がするけどそんなに印象に残る記述ではなかったような気が…。これは再読せねばと思いました。
それにしても…遠藤周作先生を見る目がちょっと(かなり)変わりましたね。真
...続きを読む摯な面、ふざけた面、様々な顔を持つ人だなぁと思ってはいたけれどもこういう一面があったとは。実際の先生はおしゃれで気障な人だったという話は聞いたことはありましたが、こういうところのあった人とは。
これほど情熱的に愛をかき口説き結婚を約束していた男がこうあっさりと別の女性と結婚してしまうとは…。女性にとっては裏切り以外の何物でもない、悲劇でしかないでしょう。
遠藤先生が結核にならなかったら、そうしたら帰国することなく留学生として学業も私生活も本懐を果たせたのだろうか?…でもそうなると、芥川賞を受賞された「白い人」も代表作「沈黙」もその後の様々な作品ももしかすると生まれなかったのではないか、あるいは生まれたにしてもその作風や物語は今残されているものとは全く違うものになったでしょう。
このような人生、こんな運命に翻弄された人間だから生み出せた作品たちなのかもしれないとも思います。この世の残酷さ、人の変わり身の早さをつくづくと味わいました。
著者の方はものすごく恩師を敬愛されていたのだなと感じました。そして遠藤周作という男がきっと嫌いだったんだろうな、とも。
フランソワーズさんの家族との交流の様子や日本とフランスを行き来する中での様子を記述した文章のところどころに著者自身の思いや矜持が垣間見えて、ちょっとうるさく感じられる箇所が散見。
あとがきを読むと出版にあたりエッセイ部分に当たる文を大幅に削られたとのことで、きっとそこももっと濃密な(?)矜持を感じさせる、かつパストル氏を描き出す主題からはあまり関係のない文が多かったんだろうなぁ(失礼!)推察するところ。かなり構成を工夫したのは感じられますがちょっと読みにくかったかな…。力作であるのは間違いないけれども。
遠藤先生の奥様のエッセイも読んだことがありますが本書について奥さまの感想を聞いてみたい、と思ってしまいました。ご存命であられてもきっと叶わぬことですが。
本書に登場する主な関係者が鬼籍に入られている故に今出せた一冊なのでしょう。