外国で産まれた物の身の上話を通して、その国をのぞいたような気持ちにさせてもらいました。
アフガニスタンは依然、混乱が続いています。古都ヘラートで作られるヘラートグラスの工房も次々閉まっていく中で、作中のグラスは外の世界へと送り出されました。グラス工房の娘さんが、グラスに語りかける言葉が印象的でした。
...続きを読むその身を以って、まだヘラートグラスを作っている職人がいるのだと、世界中に伝えておいで、というのです。世界中で苦しむ人にとって、職人が力を尽くして作った美しいヘラートグラスの存在は、希望を届ける存在でもありました。
目の前にある物の向こうに、それを作った人たちの存在を感じ、作られた場所へ関心を持ったり、敬意を持つこと、自分がその産物と出合えた偶然を喜ぶこと。それらは、物質的に物を保持するだけより、より豊かなことだと感じました。
野良猫のミケが合理的な視点からシャイフに、物の話を聞いて願いを叶えることがシャイフにどんなメリットがあるか尋ねるのですが、それに対して「楽しかった」と答えているのが、スッキリしていて心地よかったです。長々とした大義名分などなく、知らない国について聞いて、行った気分を味わい、その国の人にあってみたくなる、そんな楽しさを、心から喜べる過ごし方をしたいです。