人生初のクィア批評にかんする本。絶対に自分には無理だと思っていたから、いちおう通読できたことに驚いている。とはいえ「面白かった」というより「面白そうだった」というのが読後感。正直何が書かれていたか既にほとんど覚えていない。自分よりはるかに頭がいい人が書いた自分よりはるかに上手い文章を読むことの快楽を
...続きを読む自分なりに味わえたから良しとしよう。遊園地のアトラクションみたいな感じ。乗ってるときに楽しかったので万事OK。
↑の軽薄すぎる感想の大半はむろん私自身の未熟さゆえだが、しかし、本書じたいが、きわめて掴みどころのない論調と構成であるのも確かだろう。局所的にはいま何の話をしているのか漠然とでも追うことができるが、章を読み終えたあとに結局著者は何が言いたかったのか端的にまとめるのは難しい、そんな文章だった。それは色んなクィア批評の先達の論を引用して(批判的に)紹介する側面が大きいからでもあるし、また、紹介と当時にクィア批評の限界をも幾度となく強調しているからでもあろう。
ただでさえ複雑で掴みどころがないのに、本稿が書かれた頃はまだアカデミズムに浸透していなかったトランスジェンダー概念がここに加わったら、クィア批評はいったいどれだけややこしくなっちゃうんだ〜〜???と一周回って怖いもの見たさでテンション上がってくる。じっさい、現行のクィア批評の研究者たちはその難しい課題に真摯に取り組んでいるのだろうし。