認知症を持ち、介護を受けて生活している高齢のカケイさん。
彼女の視点で日常が進みつつ、カケイさん自身がこれまでの人生を思いかえす物語。
作者の永井さんはケアマネジャーの仕事をしながら今作を執筆したとのこと。
読み始めてまず、文章の読みにくさを感じた。文章は全て地の文で進み、語りはあちこちに話題が飛
...続きを読むんで、一文がやたら長い文章も度々あったからだ。
数ページ読んで、この物語は徹底して認知症の女性の目線を描こうとしているのだということが分かる。
長い人生を生きてきた女性の、これまでの人生を聞かせてもらっているような感覚があった。そのためカケイさんの言葉には重みが感じられて、特別な言葉ではなくても心に残るものがあったように思う。
ラストは切なさがありつつも、「良かった」と思える素敵なものだった。
認知症を持つ方のなかには、カケイさんのような世界を生きている方もいるのだろうと思う。
色々な世界を生きる人に思いを馳せ、その人の世界や人生を知ろうとする姿勢を持てる自分でありたいと感じた。