作品一覧 2021/12/24更新 新編 現代と戦略 試し読み フォロー 新編 現代と戦略/歴史と戦略(合本) 試し読み フォロー 1~2件目 / 2件<<<1・・・・・・・・・>>> 永井陽之助の作品をすべて見る
ユーザーレビュー 新編 現代と戦略 永井陽之助 岡崎久彦氏との国家戦略に関する論争から生まれた書である。防衛論争の座標軸、安全保障と国民経済、ソ連の脅威、有事、戦略的思考、摩擦と危機管理、そして岡崎氏との対論からなる。著者は吉田ドクトリンを肯定する立場。清水幾太郎、森嶋通夫といったその他の論者についても触れており、日本の戦後の国家戦略論がどう変遷...続きを読むしてきたかの概略を知ることができる。そして著者の論考は数十年を経た今の日本にも当てはまるところが多々あると感じる。 野党が政権担当の可能性がないから理想と正論を掲げることができ、それが結果として日本の軍事化を阻んだ。第二次大戦の米国で大砲を作ることでバターも増えるという軍事ケインズ主義とでもいうものが生まれたが、吉田ドクトリンが日本におけるそれの発生を阻んだ。実戦能力と無関係に限界的改善を重ね、無駄な費用がかさんで技術的停滞と退廃の兆候を見せる軍事ハードウェア産業をバロック兵器廠と呼んでいる。覚醒剤としての軍事費、武器輸出という側面。ただ陳腐化や不安定さといったリスクがあり、絶えず更新しなければならなくなるために生じたフォローオンシステムの制度化。エックス非効率を生み出し企業を腐蝕させる。戦勝すると批判を許さない聖域としての軍部勢力が国内に確立される。機構内部の要請と必要から軍備増強を計画、そこから逆算して仮想敵が想定される。 Posted by ブクログ 歴史と戦略 永井陽之助 オリジナルは1985年の出版。クラウゼヴィッツの「戦争論」を下敷きに、真珠湾の奇襲攻撃、核の下での抑止と挑発、情報戦、レーニンとヒトラーの比較、戦争の目的と手段等々について、記述している。 印象的な具体例をあげると、以下のようなものがあった。 【太平洋戦争】 太平洋戦争に至る経済制裁という名の非軍...続きを読む事的報復が、抑止力として作用するよりも、むしろ日本軍の奇襲攻撃を挑発した原因の一つとして、日米の文化の差として、E・ホールの説を引用しているのが興味深い。 太平洋戦争に至る日米関係は、英米のような「文脈度の低い文化」と日本の「文脈度の高い文化」との外交交渉であった。つまり欧米流の「これでもか、これでもか、もっと押せ」という交渉術が日本側を深く傷つける。そして日本側はその心の傷を顔に出し、言葉に怒りをあらわすことを最後の最後まで自制する。そして日本側が真に怒りの反応を呈するときは、時すでに遅く、もはやひきかえし不能地点を越えてしまっていることが多いという説は面白かった。 また、太平洋戦争の発端となった真珠湾攻撃について、「合理的なギャンブラー」としての山本元帥を捉えていることも同様に面白かった。 【ベトナム戦争】 アメリカのケネディがベトナムに介入していく意思決定についての解釈も面白かった。 それについては、さらに最後の対談で、著者は「要するに戦略的判断というのは天才のみがこれをよくなしえるというところがある。秀才ではダメなんです。ベトナム戦争の際、バンディやマクナマラと言った秀才たちが、その戦略的判断において取り返しのつかない失敗を犯したのは周知の事実です・・・(略)・・それは何故かといえば、戦争の指揮とか企業経営といったものは、科学ではなくて、アートなんです」という言葉は印象的であった。 また視点を変えて当時の日本の雰囲気を現わしている箇所があった。 「ベトナム戦争やインドシナでの内戦では、およそソ連や共産主義の嫌いな平均的日本人が、アメリカを非難し、解放戦線と称する側に同情と支援を惜しまなかったのは、この内戦が本質的に民族解放を目指すもので、共産主義革命を目指すものではないと信じていたが、ひとたび革命権力が確立されれば、旧政府関係者や協力者は殺され、共産主義政権の誕生というかたちで終結する・・・そのあいだリベラル、平和主義者なるものは、レーニン以来の民族統一戦線なるものに徹底的に利用される。そして旧政府の関係者の運命がいかなるものか、あとになって気がついても遅い。だがもっと罪深いのは、マスメディアを通じて、素朴な人々を騙す側に立つ知識人である・・・われわれ大学人も、アメリカの悲劇が分かるまでずいぶん時間が掛かったのである」 これ以外にも目から鱗といった箇所が次々と出て来る。 久々に面白い古典(?)に出会った感じがした。 Posted by ブクログ 歴史と戦略 永井陽之助 第4章戦争と革命 ドイツは対内的には全体主義的ではなく自国民については甘やかしすぎであったとの見方。ソビエトこそが対内的に全体主義を徹底させた。一方でスターリンの対外政策は全体主義と言うよりもリアルポリティクスであるとの評価。 国民国家の成立以後、戦争は総力戦化。ナポレオンのような天才は再現性がない...続きを読むのでプロイセンは参謀本部をー発明ーする。フランスやオーストリアに勝利。クラウゼヴィッツの戦争論がそのテキスト。 レーニンは革命の正当化のため国内の敵を作り出し、対外戦争のための参謀本部の機能を対内抑圧革命のためのボルシェビキに負わせ、国内で革命の敵を徹底的に殲滅する。スターリンが権力を持つとレーニンがまだしも持っていた社会民主主義な要素は消え去り、その暴力が徹底される。 Posted by ブクログ 歴史と戦略 永井陽之助 このところの新型コロナウイルスに関する政府の失策に対するヒントがあるのではないかと思って読んでみました。 ちょっとその事前の予想・期待とは違いましたが、8月と言う時期にぴったりな、太平洋戦争にまつわる日本の選択と失敗が描かれていて、非常に勉強になった。 太平洋戦争は、異なる文化間の戦いであること...続きを読むもこの書で描かれている。一方の行動の意図が、文化の異なる相手方に正しく伝わらないというのは悲劇。それは、今の時代もあって、国家間のチキンレースの様相を呈する事もある。 歴史を正しく学べば悲劇は避けられるのではないかと思うが、国家間の対立が起きているときは、その当事者は冷静さを失ってしまって、そんな事は無いんだろうな。 Posted by ブクログ 歴史と戦略 永井陽之助 個人的には「失敗の本質」と双璧を成すと思う良書。 WWⅡにおけるヨーロッパでの戦いと太平洋での戦いを中心に各戦闘における特徴と共通点をあぶりだし、 それらがなぜ成功したのはもしくは長期的に見て敗北となったのかを考察している。 目次は ・奇襲 ・抑止と挑発 ・情報とタイミング ・戦争と革命 ・攻勢と...続きを読む防御 ・目的と手段 純軍事的な話も多く、はあ。。となって終わる部分も多いが これは真理だと思う。 「戦略とは自己のもつ手段の限界に見あった次元に、政策目標の水準をさげる政治的英知である」 つまり、現実的にできなさそうにも関わらず 夢物語な目標を設定してしまうことが悲劇の始まりになる。 これはある意味、個人の生活にも言えるだろうし、 会社などの組織でもいえることだと思う。 大事なことはチャレンジと無謀を履き違えないことではないか。 Posted by ブクログ 永井陽之助のレビューをもっと見る