16年間の長きにわたってドイツの首相を務め、昨年政界を引退したメルケルさんの評伝本。 著者はフランスのジャーナリスト。
メルケルさんは東ドイツに生まれ、物理学者への道を歩んでいたが、ベルリンの壁崩壊後のドイツ統合を機に政治を目指す。 物理学者らしい論理的な思考と、人間関係の抜群の調整力で頭角を現し2
...続きを読む006年に首相になる。 任期16年の間には、リーマンショックや原発問題、ギリシャ危機、移民問題、ポピュリズムの台頭など様々な問題があったが、うまく乗り切り任期を全うする。東ドイツ出身の女性で離婚経験有り等、自由主義社会の政治家から見ると大きなハンデと思われたが、彼女はそれを利点として考えていたように見える。 決断の遅さがウィークポイントだが、逆にそれが良かったこともある。彼女の一貫した政治姿勢が信頼を得ているのだろう。 メルケルさんについてはほとんど知らなかったけれど、この本を読んで、イギリスのサッチャー首相と並ぶ素晴らしい女性政治家だと思った。
ちなみに彼女が首相の間に、日本では小泉首相から岸田首相まで8人も政治家が変わった。 長かった故安倍首相でも任期は9年。 その2倍近くの長きにわたって首相であり、また任期途中で投げ出すこともなかった。 メルケルさんに比べると、日本の政治家はともかく、アメリカの大統領でさえも小粒な政治家に見えてしまった。