タイトルから、有名な建物の紹介本かなと思って読み始めたのですが、実際にはサブタイトルにあるように、建物の保存と活用に関する内容でした。
本書では、明治時代以降、歴史的建造物の価値や魅力がどのように見いだされるようになったのか、過去に施された改変をどう捉え、保存・復元・再現していくのか、という切り口
...続きを読むで話が展開します。この中で、建築物の復元・再現は必ずしも原型に忠実であることが最善ではなく、後の時代に加えられた改変など、さまざまな要素を考慮して最適解を見出す必要性が語られており、深く考えさせられものがあります。
特に明治以降の近代建築は、使い続けられるために、現代水準で求められる安全性、快適性を確保するための改造はどこまで許容されるのか、といった単純な保存を越えた課題に対しての取り組みが必要となります。
一見、建築物の持つ意匠・雰囲気にあわない興が覚めるような改変も、実は建築物を使い続け、保存していくためにはやむを得ないものであることに気づかされます。
本書が対象とする歴史的建造物は、社寺・城郭から民家、近代建築、そして街並みや都市まで幅広く、それぞれについて多くの事例を引きながら、その保存・復元・再現の取り組みの長所・短所を指摘し、読者に客観的な広い視座を与えてくれます。