本書の元版が中公新書として刊行されたのが1973年、50年近く経っているが、本書を通読すれば、江戸時代の主要な思想家の思想内容やその時代的意義について、概観することができるように思う。
徂徠や宣長、梅岩などの著作を原文で読んだことはあるのだが、意味自体はある程度分かるものの、どうしてこういう結
...続きを読む論になるのか論理の繋がりが理解しづらいものも多く、あまりまともに読んだとは言えなかった。
本書のように、泰平の世に伴う武士の変化や、商業、経済の発展に伴う社会構造の変化などの時代的背景をきちんと描いた上で、朱子学、古学、町人道徳、国学等が登場してきた意義や、各思想家の思想が簡潔に説明されているので、良い見取り図を与えられたように読み進めることができる。
研究の進展によって個々的には異なる点もあるかもしれないが、江戸時代の思想のあらましを知るためにとても参考となる、スタンダードな一冊だと思う。文庫版になって読むことが出来て良かった。