まずもって、フェアな本。
この話題について、イデオロギーや結論ありきでなく理解しなおしたい人にとっての必読書。
海外の良質なノンフィクションを読みなれている人の中には、時系列でやみくもに進む描写に「なにがなんだか」感を覚える人もいるだろう。
ほら、外国人ライターって「現場の混乱を離れて、まずはリア
...続きを読むクターというものを理解しておこう」みたいな筋の立て方が上手じゃないですか。本書はそういう感じじゃない。
だが、いやだからこそ、ああこの混乱がまさに現場で起きていたことなんだ、振り返ればわかる全体像なんてものは当時は誰も持っていなかったんだということがストレートに伝わってくる。
「いいわね、必ず生きて帰ってらっしゃい」。若手職員が避難所の母親に電話したときの言葉が胸に迫りくる。
あのとき、同じ会社の中で逃げ回った人と立ち向かった人がいた。それは日ごろからの人格の差ともいえるし、たまたまそこにいた「めぐり合わせ」ともいえる。
誰もが「もしそこに自分がいたら」を内省せずにはいられない本。