本書『現代の英雄』が刊行されたのは1840年、著者レールモントフが26歳のとき。翌年には旧友との間での決闘により命を落とす。
本書では、主人公であるペチョーリンに関して、恋物語やちょっとした冒険談などのエピソードを折り混ぜて、語り手による語りや手記、本人の日記の形を取って、その性格や考え方、人
...続きを読む物像が明らかに(?)なっていく。
ペチョーリンはどういう人物なのだろうか。全体的には、冷笑的で、物事に真剣に取り組むことを避ける人物という感を受けるのだが、細部まで読めば読むほど、理解するに一筋縄ではいかない面が多い。「自意識」の塊のような人物と言えばよいのだろうか。
こうした人物を、26歳という若さで造形したというのが何といっても凄いことと思う。
また、帝政ロシアがカフカス地方に侵攻していた時代状況を背景として、カフカスがロシア文学において占める位置なども理解できた。