GoogleMapとか、スマホのナビ機能など知らず知らずのうちに日常的に地図に関わるサービスの提供を受けている私たち。その地図の進化についてまとめられた国土地理院元職員の著書による1冊です。
知っているようで知らない情報満載でした。いくつか例を挙げます。
1)高校生ぐらいでよく地理の授業で触れた国土
...続きを読む地理院による2万5千分の1,あるいは5万分の1の地形図の作成に関わる部分です。地図の元データは高精度デジタルカメラの写真測量や、測量基点の制度はGPSなどの技術革新があるものの、最終的に「地図」として完成させるには「総描」という作業が必要になります。例えば、市街地の1車線道路は道幅5m程度ですが、これを2万5千分の1の縮尺通りにすると0.2㎜になってしまい、判読ができなくなるので0.4㎜で描く規則があったり、この規則通りで道幅を広げると道路沿いの建物と干渉してしまうので、「道路沿いに建物がある」という事実を優先するために建物を少しずらして描く、などの微妙な”職人技”が存在します。
2)2万5千分の1地形図が、日本の国土を全て網羅できたのは、航空写真が使えない北方領土の部分を人工衛星データなどを駆使して作成された2014年でした(こんなに最近だったんですね!)、
3)球面体の地球を平面の地図に投影するにはいろいろな投影法があって、様々な図法がある(メルカトル図法、正距方位図法、などなど)ということは中学地理の授業の初期に触れる内容ですが、国土地理院の地形図はメルカトル図法が用いられています。
昨今防災の観点から注目されているハザードマップの読み方、技術革新という意味で地図データのデジタル化などの内容も紹介され、さらに国土地理院のHPの使い方などにも触れられ、著者の”地図愛”があふれる内容でした(国土地理院のHPはすごく面白いです。過去の航空写真を見ることができて、自分が育った地域の変化などもリアルに見ることができます)。個人的にはもう少し、地図作りに関する記述のボリュームが多いほうが良かったのにな、という印象です。