あまり類書をみないのでついつい手にとった。
月経に関するタブーが数多く紹介されている。特に、月経中の女性に接触すると、動植物が病気にかかったり枯れたりするという言い伝えは世界各地にある。
「タブー」の語源がネイティブ・インディアンのtabuで、さらに外科医で社会人類学者のロバート・ブリフォルトによ
...続きを読むるとtabuの語源はポリネシア人の使用していたtupuaで月経を意味していたらしい。他にも、メソポタミアの女神ニンフルサグは、粘土に月経をぬりつけて人間を創造した。旧約聖書で人類の祖先となるアダムとイブのアダムは、Adamahに由来し、その意味は「赤い土」であり、メソポタミアの神話と共通している。
旧約聖書の「レビ記」では、月経血のことをflowerと呼んでいる。花を意味するflowerは、流れるの意味のflowから変化し、flowは月経血が流れるという意味もあった。月経は生命の源であるので花を指す言葉になったという解釈がある。
また、古代バビロニアの聖典に出てくる女神イシュタルは、満月に月経を迎えている月の女神という見方があり、女神の月経の日(つまり満月の日)をsabuttuと呼び、不吉な日でありいかなる仕事、食事、旅行をしてはいけないとされた。sabuttuはユダヤ教やキリスト教においては休止を意味するsabbathとなり、ユダヤ教では土曜日、キリスト教の日曜日、イスラム教の金曜日となった。三大宗教の休息日は、バビロニア時代の女神の月経の日が転じたものだった。そこから、サバスの習慣は農業に適用され、7年につき1年を休耕とした。現在でも、ユダヤ社会やそれ以外の国々で研究者や聖職者の自己研鑚のための有給休暇システムとして制定されている。
ヒポクラテスは、月経を有害な体液の排出ととらえた。この考えは、悪い血を抜き取るという「瀉血(しゃけつ)」という伝統療法につながっていった(効果は実際は殆どない)。中国医学の「瘀血(おけつ)」の概念にも類似している。ジョージ・ワシントン米初代大統領は、瀉血による出血死とも言われている。
また、発展途上国では近代的な避妊用具を利用できない為、授乳による生理的な避妊法が推奨されている。授乳間隔を日中は4時間、夜間は6時間以内にすると、98%以上妊娠しない。
中流以上の階級の女性で特に月経があることを周囲にもらすことがはばかられているという記述があるが、それはエソロジカルには当然のことだろう。