個人的には中盤から終盤にかけてがハイライトだったと思います。
so whatが見えづらい展開にもどかしさを感じることも多々ありましたが、全体として読む労力に見合うリターンを得られました。
「階層」「文化」「メディア」「知性」論を展開して近代的動物保護思想への鋭い指摘を構築していく過程に、印象深い記
...続きを読む述が多かったように思います。
例えば、写真は鑑賞者に対して希少動物の「不在」を伝えるには不適なメディアであることが言及されています。それを踏まえると、本書が紹介する動物保護をめぐる衝突のいくつかは、当事者間の事実認識の相違がもたらすミスコミュニケーションに起因するのではないかと考えられます。
特に動物保護活動には恣意性が介入しやすいため、何をどの手段で伝えるかにはもっと注意が払われるべきだと理解しました。
読者の考えを促すような示唆が多く残されているのに、それらが構成上わかりづらくなっているのが残念な点でした。
どうせ論文を再編成するのなら、ファクトの部分よりも著者の分析や示唆にもっとスポットを当てて欲しかったです。
それだけ有意義な指摘が多かったことは確かでした。