作品一覧
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4.0どうしたら普通に見えるんだろう。どうしたら普通に話せるんだろう――。いつもまわりから「変」と言われ続けてきた高校生の田井中は、自分を異星人のように感じていた。友だちが欲しいなんて贅沢なことは言わない。クラスのなかで普通に息さえできたなら。そのためならば、とむかしから好きでもない流行りの歌を覚え、「子供らしくない」と言われれば見よう見まねで「子供らしく」振舞ってもみた。でも、ダメだった。何をやっても浮き上がり、笑われてしまう。そんな田井中にとって唯一の希望は、担任の美術教師・二木の存在だった。生徒から好かれる人気教師の二木だったが、田井中はこの教師の重大な秘密を知っていたのだ。生きづらさに苦しむ田井中は二木に近づき、崖っぷちの「取引」を持ち掛ける――。社会から白眼視される「性質」をもった人間は、どう生きればよいのか。その倫理とは何か。現代の抜き差しならぬテーマと向き合いつつ予想外の結末へと突き抜けていく、驚愕のエンタテインメント。2019年ポプラ社小説新人賞受賞作。
ユーザーレビュー
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Posted by ブクログ
少しずつ、自分が何が好きだったのかがわからなくなっていった。それでいい、と思った。こうして元の自分が消えてしまえば、きっともう少し息がしやすくなる。
それでも、中学に入り、卒業する頃になっても、空気は薄いままだった。(p.29)
人を見下して心をなだめる自らを蔑む気持ちと、その心理を知っているという自負、そうした自意識がキャベツやレタスの層になって、心を襞だらけにしていた。(p.31)
…理解不能なものをこうして「そういうものだ」と押しつけられると、こっちが、明文化されていないものに関しては何が本当で嘘なのかを見抜くのが不特手なことに付け入れられている気がして、不快で、不安だった。そしてなぜ、 -
Posted by ブクログ
ネタバレ大きなボリュームでしたが、学ぶことが多く物語全体としてとても面白かったです。
物語の序盤では、主人公である田井中の行動(幼少期に友人の父親を叩いたり、本屋で万引きをしたり等)に対しヒヤッとすることがありました。
その後、二木の秘密を知った田井中は、万引きがバレた時にその秘密を弱みとして利用しようとしたところから、物語は加速し思わぬ展開に進んでいったと思います。
終盤の二木とクラスの緊張感は凄いものでした。
田井中と口論になった時の二木のセリフには、人々の生き方について色々と考えさせられました。
特に印象的だったのは、本当の自分を押入れの中にしまって生きるという選択肢について。その考えは -
Posted by ブクログ
2019年ポプラ社小説新人賞受賞作。
かなり面白い。ちょっとトンデモな内容ではあるものの、読んでいてかなり没入感を得られた作品でした。
大なり小なり、生きづらさを抱えたことがあるような、『ちょっと自分は人とは違うかも』な方にはオススメです。
そして、主人公が作中で書き始めた小説の中身がメチャクチャ気になる。スピンオフとして、そこにスポットを当てて一つの物語にできそうな雰囲気すら感じました。
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誰からも馬鹿にされてしまう「イタイ」男子高校生x秘密を抱えた「ヤバイ」先生。
生徒と教師のスリリングなやり取りを通じ、社会からはじき出されてしまう個性を持つ人間がいかに生きうるかを描