自動車産業から見た労使関係の日米比較論。一般的に「実力社会」「競争社会」のイメージが強いアメリカだが、それはホワイトカラーの話。組み立て工場などで働くブルーカラーの世界では「平等主義」「年功序列」が徹底されており、それがアメリカ自動車産業の復活を阻害しているという。即ち、労働者間の格差をなくすため
...続きを読む、組合側は「同一労働、同一賃金」の原則に固執し、成果による賃金の差異化を拒否してきた。また労使対立の結果、管理職である職長の権限を規制するため、移動や昇進は「年功」(先任権)に拠ることが協約で定められた。その結果、現場のモチベーションは上がらず、柔軟な人事配置も難しい状況に陥っているという。こうした現状を打破する鍵として著者は「日本的能力主義」=「査定付き定期昇給制度」の有効性を説く。
本書は、アメリカの一般的な労働者の実情を知ることができ、それは我々がイメージするものとは大きく異なっていることが分かる。一方で、普段はネガティブな文脈で言及されることが多い「日本型経営」の意義も理解できるようになっている。今後の労働問題を考える上で、まず前提となる知識を整理・理解するのに最適な一冊である。