国際政治の動きという観点から、人類がどのように病と闘ってきたのかを論じている本。
何となく、世界史の副読本を読んでいるような感じだった。内容的には、なるほどと思わせるようなことが多い。
結局のところ、
「病に関する国際的な取り組みは、しばしば政治状況に左右される」
という点に集約されるのかな、と
...続きを読む思う。
世界から天然痘が根絶されたのは、感染者が比較的分かりやすいという病気の特徴であったり、ワクチンが比較的作りやすかったという要因もあるが、マラリア対策で国際的なイニシアチブを取っていたアメリカに対し、ソ連が天然痘根絶プログラムを提唱したという要因も大きかった。そしてベトナム戦争で国際的信用が失墜したアメリカがそのプログラムに賛同したことで、根絶に向けた動きが加速したのである。
或いは、生活習慣病や喫煙への対策についても、砂糖業界やたばこ業界などのアクターから圧力を受けるという話は、よく聞かれる。
医薬品アクセスについても、特許との関わりによって発展途上国では十分にアクセスできない問題があったり、先進国では注目されない「顧みられない熱帯病」といった病気への対策も、その時々の政治状況によって、動きが緩慢になる。
新型コロナウイルスの初動対応を巡ったWHOへの批判についても、そもそもこうした保健機関も政治のアクターの一つである以上、避けられない事態ではあるのだろう。逆に、そうした状況への理解・関心こそ重要なのだろう。