リーマンショックをはるかに超える金融危機が起こるという危機感が著者を政治活動に駆り立てたとのことで、本書では金融危機がくる根拠がタイトルにある日本企業を中心にビジネス形態や金融商品の運用から数字を多用して説明されている。行き過ぎたグローバル資本主義が進んだことで実体経済を伴わない数字だけのマネーゲー
...続きを読むムがすでにバブルの様相を呈しており、あとは誰がババを引くかの状態にあることがこれでもかとばかり説明されている。悲しいことに国民にも大きな影響をもつ日本企業や金融機関がすでにババを引いているようだ。今後来るであろう金融危機の規模感の大小はあるにせよ、本書で指摘されている現在の金融システムが不健全であることは確かで(例えば世界のGDPの数倍の金融資産があるのはおかしい)、金融危機によって生じる悲惨な状況を政治で食い止めたいという著者の思いは伝わった。個別の組織や個人名が若干センショーナルに表現されているため陰謀論のように見えるところもあるが、公になっている財務諸表や人や政治の動きの事実に基づいており、著者の自称する「炭鉱のカナリア」としての注意喚起は真摯に受け止めたい。本書は新型コロナウィルスの影響がまだ認識されていない時点で執筆されていることからその影響については言及されていないが、金融危機のタイミングを早め規模は大きくなることだろう。国と金融システムへの問題提起だけでなく、個人がどう資産を守るかについても若干だが言及されているので参考にしたい。