古より慣習として残る「儀礼殺人」、今なおそれにより命を落とす子どもが多くいることを、私は知らなかった。
権力を得るために、呪術師や呪術医を頼る。困り事があると、医師よりも役所よりもまず相談に行くのは彼らの慣わしである。問題や事件は彼らに占いで解決してもらおうとする。そんな風に一見馬鹿げたような話がご
...続きを読むく当たり前にされている地域があると思うと、なんとも言えない苦い気持ちが胸に広がる。
ノンフィクションではなくフィクションで書いた理由は読者が読みながら自分の考えを紡いでいく余地を残すためだと著者は言う。
正直なところ、フィクションだとはいえ、実際に起こっていることだと思うと、創作された物語としては読めない。
この物語では、アマントルというたまたまその地域に派遣された外部の人間がその慣習に口を挟む形になっている。けれど、彼らはそんなことでは全くびくともしない。それは心の底から何も悪いことをしていないと思っているからなのか、それとも悪いと思っていても行うことが当たり前で仕方がないことだからなのか。
こういった出来事とは無縁の読者に対しては、それを信じるものたちが固く戸を閉ざしているようにも見える。我々は黙って見ているしかないのだろうか。
実際に起こる事件をフィクションとして書き、その問題点の本質を浮き彫りにしている手腕はすごいと思う。
すごいと思うだけに、もどかしさの残る読後感となってしまった。