『何のために、私たちは異国の言葉を勉強しているのだろうか。』
セルビア在住の詩人で翻訳家の山崎佳代子さんが、1990年代のユーゴスラビア内戦と、NATOによる空爆について、ご自身の体験を書いた本である。
山崎佳代子さんはその著書の中で、「言葉が戦争を作り、人を殺す」ということを訴え続けているが、
...続きを読むこれはユーゴスラビア内戦の民族間の対立を、西側メディアがセルビアだけを悪者にして報じ、経済制裁と空爆で国家を追い込んだことを指している。
冒頭の言葉は本書からの引用であるが、セルビアという国に惹かれ、留学・移住し、日本語・セルビア語両方で詩作を重ねてこられた上でのその言葉はとても重い。
言葉を知るということは、同時にその国の文化や歴史、思想を知ることであり、同じ言葉を知る者同士で会話できるということである。
その素晴らしさを伝えてくれる短く力強い一節に圧倒された。
巻末には、文庫版出版に当たって2022年5月に書かれたメッセージがある。
ご自身の体験を踏まえた上で、現在の世界情勢について言及されている。
一人でも多くの人に今読まれることを願ってやまない本です。