ジャンプ作品のノベライズに対する期待値は、過去の実績からして最低限だった。
けれど読んでみたら、今作は存外面白かった。
1章は、娯楽の少ない石世界で昔語りを求められた千空が話す「三七〇〇年前の科学部乗っ取り」。
2章は、千空の話を元に石世界で「歓迎会」を催そうと試みる科学王国の交流。
舞
...続きを読む台を大きく変えながらも、話には一本筋が通っていて好印象。
千空15歳のスペックを現代社会ベースで知ることができたことや、初期石神村の生活基盤とその向上について垣間見れて嬉しい。
Dr.STONE本編はテンポのいい展開が大いに魅力だが、反面交流パートや過去話は削られやすい土壌なので。
15歳にして年嵩の挑発に動じず、毒とユーモアを含んだ講義ができ、どんな人間にも真摯に対応できる千空のスペックマジ主人公100億%。現代社会向けの技術力もみせてくる。
しかし、その千空でもすくいきれないところに手を伸ばす大樹と杠の心強さ…!
実に良い旧世界が垣間見れた。
オリキャラが多くなる1章も、「ナイス先輩」や業罪重い「タケミカヅチ先輩」など、印象とインパクトから肉付けする構成が受け止めやすかった。
主役たちのように特別でない、けれど個性のある彼らは身近に描かれている。終盤に名前を呼んでくれる展開が熱い。
ラスボスにしてヒロイン部長は、千空との共通点と相反性がとても良く「停滞と前進」の対話は染みた。
石化とは、座り込んで動く意思をなくすことなのか。治してくれイシのお医者さん。
そこからのペルセウスならぬダイダロスとイカロスを生かした展開は、本当良かったのでいつか原作でも回収してほしい…!
イカロスに感じていた絶望感が希望に変じる流れが最高。上空100kmのゴミ投機車に唆る。
文脈も、ネギでも白菜でもなく大根を持ってきたかと思えばそれを最終工程のロケットに絡めてくる工夫や、進行と停滞の対比と解きほぐす構成など、楽しんで読むことができた。
パスツールやクラインの壷などサラリと普段聞かない用語を混ぜ込む論調も、地の文が皮肉な言い回しを使ってくるのもDr.STONEらしい面白さを感じる。
クロムは、ルリの孤独やひょっとしたら寂しいのかもしれない千空の慰めなるかもと思えば、よくわからないバンド活動も全力でやってくれる男だよ…!