良く「辺境効果」などと言うが要するに文化の中心から離れて外界との接触が少ないとそこには古くから伝わった文化が変化することなく保存されているというもの。これがまさしく日本文化に見られるというのが本書、中国は四川省出身の文化人類学者である彭丹さんの見立てだ。
中国で既に千年も前の古文書に現れるだけとな
...続きを読むった「お屠蘇」が日本に根付いているのにビックリしたり、とうの昔に廃れた中国古代の上巳節が由来だという桃の節句が未だにあることに驚いたりもする。その彼女が日本文化を更に知ろうと飛び込んだのが侘・さびの世界の茶の湯だが、そこで目にしたのが国宝とされる中国製陶磁器の数々だ。日本の国宝なのにどうして中国の陶磁器が選ばれているのか疑問に思う一方で、中国は現存しない貴重な陶磁器が日本にだけ存在するという不思議。それらの陶磁器の来歴を探ることで日本と中国の文化の関わりを調べたのが本書だ。
本書以上に惹かれるのが口絵写真で紹介される国宝級陶磁器、8点のカラー写真だ。中でも「曜変天目茶碗」は「お宝鑑定団」風に言えば”実に景色が良い”とでも言いたくなるし、写真で見てもこれはと思える一品だ。曜変というのは元々は窯の中で何らかの予期せぬ炎・温度の変化で茶碗の釉薬が泡立ちそこがなんとも言えぬ味わいを出しているのだが、そもそも皇帝献上品としては規格外でありすぐに廃棄されるべき代物であったのが、どういう経緯なのか日本まで渡り茶の湯で珍重されて今の世にまで残った貴重品だという。
こうした写真を見るだけで本書の元をとったようにも思えるし、その来歴などを知れば知るほど更に今後のお宝鑑定団も楽しんで見れるというものだ。