3月14日〜この円周率の日に数学教師アダムの焼死体が発見された。
第一発見者は、教え子のサルで近くに先生の車があったから…偶然見つけたと。
同僚の社会科教師ノラは、この不可解な死に疑念を抱きアダムのことを調べ始める。
寂れた町で起こった事件は、親や祖父母の代からの知り合いという濃密で小さなコミュニ
...続きを読むティであるが故に限られた登場人物ではある。
そのなかで謎の中心にいるのは、少年サルである。彼が大人たちを惹きつけるのは、観察力があり物静かで注意深く、賢さと共感力を持ち人の心の機微に敏いからだろう。
サルが見たものの全てが明らかになるが。
果たしてそれは…。
どうしてここまですることができるのだろうか。
ほんとうにサルのことを考えれば、彼に全てを委ねることはしなかったはずだと思うのだが。
大人の甘えや我儘さ、弱さを見せて苦しみから逃れたとは…
そこまで考えが及ばないほど苦悩していたのかと思うとそれを憎む。
この小説は、少年を中心にしながらも登場する大人たちはそれぞれに罪や後悔を抱えていて思い通りにいかない人生と小さな町に息苦しさを覚えながらも生きているというのが伝わる。
それを見ながら育った少年サルには、安らげる希望がある未来であってほしいと心から思う。