読んでいて、これがフランス革命より前の時代の小説かと疑いたくなるほど臨場感があった。
スタンダールの恋愛論といい、デュマフィスの椿姫といい、フランス文学は恋の情熱がいかに幻想的で破滅的かを克明に表現している。
主人公のシュバリエがいかにマノンを愛しているかが、主人公の視点で終始書かれているので、い
...続きを読むかにそれが狂気と隣り合わせかということが客観的にわかるようになっている。
世界を支配できるとしても彼女の愛さえあれば他に何もいないという境地には、恋は盲目という言葉があるとおり、多くの人が共感できるように思う。
作者は、浮気をされようともここまで友人や家族を翻弄し苦しめ、詐欺を働き、人を殺しかける主人公の愚かさを描く。挙げ句にその情熱の元となった恋人を失う顛末から、恋愛感情が麻薬的な作用をもたらすこともあるということを教訓として伝えたかったのだろうか。