ペストが流行する14世紀のフィレンツェで、10人の紳士淑女が語る、18禁多めな百物語。上巻は30話まで。
1人1話ずつで1日に10話、10日で100話となる計算。
1日目は機知に富む話が多く、何となく日本昔ばなしを連想した。2日目以降はその日ごとにテーマが設けられ、お題に沿った話が語られるが、次第
...続きを読むに猥談味が濃くなっていく。3日目になるとほとんどの話にエロティックな要素がある。冒険譚や貴種流離譚などの内容も豊富で、どの話も面白い。海賊に捕まってどうこうというものも多く、アラビアンナイトなども連想されるが、ファンタジーな要素はない。
個人的なお気に入りは、運命の不思議を感じる第二日第六話、第七話、第八話、第九話。恋愛ミステリーな第三日第七話。とにかく本書を読んで強く感じたことは、淫靡なエロ話は度が過ぎると笑い話になり、さらに突き詰めると人生訓になるのだな、と。
ボッカッチョはダンテを敬ったことで有名で、本作にも影響が強く出ている。「神曲」の訳者である平川祐弘によって21世紀に入ってから翻訳された本書にはそのあたりの注釈が詳しく、他訳に対するアドバンテージがあるのでは(他訳は読んでないけど)。