藤岡靖洋さん『コルトレーン ジャズの殉教者』(岩波新書)を読む。
スピリチュアル関係がそもそも苦手で、『アセンション(神の園)』とか『オム(阿吽)』とか何のことやらわからんし、有名な「私は聖者になりたい」という発言もうさんくさくて、私にとって、どうにも仲良くなれない代表選手がトレーンだ。
そのト
...続きを読むレーンの生涯の代表作といえば『至上の愛』。パート1「承認」、パート2「決意」、パート3「追求」、パート4「賛美」からなる組曲で、これも眉唾もののタイトルだなあなんて思っていたら、何のことはない、当時トレーンは4人の女性と関係をもっていたが、心機一転その関係を清算して、アリスとやっていくことに決めたのさ、ということを宣言したアルバムだったというのである。
来日インタビュー時の「聖者に…」発言も、その傍らには選ばれしアリスが鎮座していて、「私は聖者になりたい(笑)」のあとには(笑)が続いていたのだとか。要するに、新しい奥さんを前に「もう浮気はしません」という言い訳なわけで、ストイックな求道者のイメージはどこに? みたいなことが書いてある。
もしかするとコルトレーン・フリークの人たちにはショック!な記述なのかもしれないが、私にとっては、(あやしい)聖者コルトレーンがはじめて人間に見えた瞬間で、かえって親しみを感じてしまったわけ。
ちなみに、トレーン本、過去に何冊か読みましたが、さすがトレーン研究の第一人者の藤岡さんだけあって、この本ではじめて知った内容がてんこ盛り。トレーン苦手な私も楽しめました。おすすめ。