二次元界(フラットランド)に住む四角形が主人公の物語。
ある日、主人公の四角形氏はほかの次元に行って帰ってくる。数学者である彼は次元の違いを理解する。お話としてはそれだけだが、二次元の世界の歴史や文化、そこに住む図形たちの生活を四角形氏が丁寧に説明してくれ、異世界を描くファンタジー作品として読みご
...続きを読むたえがある。
ほかのファンタジーと一線を画すのが、この世界の「認識」の仕方について多くを割いているところだろう。二次元界の住人は四角形も三角形も円もそのまま見ることはできない。見えるのは線と点である。何角形かで身分の決まるフラットランドで、図形の彼らがどう図形を認識するのかということが説明される。この説明を通して、読者はふと三次元に住む自分の視界は二次元でしかないことに思い至る。そういう仕掛けの本なのだ。
感覚では捉えられない高次元を四角形氏はアナロジーにより理解した。それを追体験した読者も理性によって、三次元の世界から飛び出すことができるようになるだろう。目の前の世界が広がるような壮大な読書体験ができた。
また、フラットランドは文化的にかなりのディストピアである。19世紀に書かれた本で、著者が風刺としてそう書いているのか、何の気なしにそういう世界を作ったのかは分かりかねたが、風刺と思って面白く読んだ。