あるバンドマンの死去、それが様々な人々に波紋を起こす。
本書はミステリではないがミステリ小説のような構成で一気に読ませる秀作である。
例えばカート・コバーンやシド・ヴィシャスがその例だが、才能の詰まった人というのは普通の人生を普通に歩けない。生きるのがどうしても上手くいかない。
本書に登場する十太(
...続きを読むじゅった)もそうで、彼はバンドをしたくてもことごとく上手くいかない。そして悲劇が待ち受ける。
時間を遡る形式にして描かれる本書は青春の、何かが始まりそうな予感を前面に押し出している。陳腐な言い方をしてしまえば伝説の始まり、だろうか。そして大勢の若者がそうであるように彼らもそれに敗れていく。だがここでストーリーを投げ出さないのが本書のいいところだ。青春小説のくせに青臭くなく、真正面から衝動を切り取った面白い一冊だ。