アルゼンチンの学校へ赴任している英国人教師トムは、休暇中に出掛けた南米旅行で、ウルグアイのプンタ・デル・エステと云う海岸に立ち寄った。
そこで彼を待ち受けていた光景は、重油まみれで息絶えた夥しい数のペンギンたちの屍だった。
しかしそこに一羽だけ、瀕死の状態ではあるがなんとか息のあるペンギンを見つける
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トムは保護するべきか、自然に任せてそのままにするべきか大いに迷うのだが、結局助けることを決意する。
その後トムとペンギンは、ウルグアイからドタバタ旅行の末に何とかアルゼンチンへ入国を果たし、トムが校内で寄宿している部屋にペンギンを無事連れ帰った。
トムに保護されたペンギンは「フアン・サルバドール」と名付けられて学校の屋上で暮らすことになる。
サルバドールの愛くるしい動作は、たちまち校内中の人気者になり、生徒たちへの教育上でも良い影響を与えることになる。
若き教師トムと愛らしいサルバドールの関係は、最高の親友となるまでの暮らしが実話として綴られている。
このノンフィクションは、単にペンギンと人間の心温まるお話だけではない。
いま世界共通の問題は地球環境にあり、温暖化による異常気象が声高に叫ばれ、一刻の猶予も許されない事態に人類は追い込まれている。
地球生物の歴史上、稀にみる夥しい繁殖を繰り返してきた人類が引き起こした自然破壊は、他の地球生物の存在も希薄なものにしたり絶滅させてしまったりしている。
トム・ミッチェル氏が綴った『 人生を変えてくれたペンギン-海辺で君を見つけた日 』は、人とペンギンの心温まる実話を通して、我々が生じさせた地球環境破壊への警鐘なのだとの思いに至った。