凄く面白い。
シンプルでありながら物凄く重い荷物を背負い込んだ本だ。
言及範囲、取り扱い射程が長大である。ギリシャ哲学、ベルクソン、ニーチェ、カント、ヘーゲル、ハイデガー、ダーウィン、フロイト … …。万物を縦断し、横断し、掘り上げ、そして掘り下げる。
次から次へと諸事象が繰り出される。
それゆえ
...続きを読むに私のような凡人にはあまりに突飛な論脈だと感じる箇所もしばしばであった。
何かと何かが違うということ。
同じことを繰り返すということ。
差異と反復は共存し得ない対立概念でありながら、それと同時に、両立するものでもあると汲み取った。その霊妙さが本書全体を覆っていた。
下巻の前半、微分、積分の話題で数式が幾度も飛び出してきた。自分にとっての険しい峠であった。
印象的な節は数知れず。
強いということ、強度についての数的、数学的説明。物理的、物理学的解釈。
生きるというのは墓場へ向かうことではない。
「パラドクスが哲学におけるパトスである」、胸の内側に深く浸透してきた。
根拠づけることは、何によって成立するのか? 何に対して行使されるのか?
分からないことを分かるために読む。
分かろうとしないわけではない。
もちろん分かろうとしているがそれでも分からないことがある。
分からないことがあるということから人は目を背けがちであるが、そこに抗ってみてはどうか? という、メッセージにもならないメッセージを勝手ながらに嗅ぎ取ったりもした。