[くるりんぱの怪]答えを知っているようで知らない、「なぜ鏡の中では左右が反転して見えるのか」という問いを糸口とし、鏡映反転という現象を解明しようと試みた作品。プラトン以来、数多くの哲学者や物理学者が挑んでは破れてきた身近な謎をめぐる科学ミステリーです。著者は、認知科学を専門とし、東京大学大学院で教鞭
...続きを読むをとられている高野陽太郎。
まず、鏡をめぐるこの問題に対する明確な解が、未だに存在していないという指摘に驚き。本書の概要を見て「あ、これ絶対に面白いタイプの本でしょ......」と感じて購入したのですが、その第一印象を軽々と超えてくる興味深い議論の数々に、知的好奇心が絶えず興奮と喜びを覚えた読書経験になりました。それにしても世の中には意外と知らないコトってたくさんあるもんなんだなぁ......。
評者は子どもの頃、「鏡は左右を反転する」と説明されて、「いや、でも左腕は左に見えて右腕は右に見えるじゃん」と思っていたのですが、そう認識する理由もしっかりと解説されており、個人的な思い入れが(意図せずして)深い一冊になりました。ちなみに、基礎知識がまったくなくても、ところどころページを行き来しながら十分に読み通すことができる難易度だと思いますので、興味をお持ちになった方には迷わずオススメしたい作品です。
〜そもそも、光学反転とうのは、純粋に物理的な現象ではなく、形態認知という心理的なプロセスがはたらいてこその現象なのである。〜
そして著者の「おわりに」がまったく本論とは異なる意味で素晴らしい☆5つ