I am GOD'S CHILD
この腐敗した世界に堕とされた
How do I live on such a field?
こんなもののために生まれたんじゃない
山上徹也が聞いていた鬼束ちひろの月光を久々に聞いてみた。京大卒の父は自殺。兄は病気で失明し、兄も自殺。祖父の会社は倒産。母はこうした環
...続きを読む境に耐えられず、父の生命保険金を統一協会につぎ込んだ。山上は高校までは進学校に進んだが、こうした状況で大学に行けず。非行に走るでもなく、真面目な優等生がプレカリアート化していく。
宗教組織さえも利用する、政治家を射殺した。
そこが本来の敵ではない事にも山上は気付いていた。インパクトはあるが、闇は壊せない。人の苦しみに漬け込んで金銭提供を煽る根本の組織は崩せない。それでも尚、許せない。二つとも明るみに出して、世論に問うのだ。父と兄を追う前に。
一体彼の何がわかったつもりで、外野から正義を語れるというのか。勧善懲悪や二元論、一般論や正論で語れない複雑な世の様を、我々読書家は理解するために本を読んでいるのではないか。純文学は、そうした人間の過ちや弱さ、葛藤や極限を疑似体験させる。殺人の良し悪しを語るのは分かりきった事で、この本を読む上では必要のない前提だ。
切ない。自分だったらと考える。
ロスジェネ。そして、鬼束ちひろの詩。報われない、世界に堕とされた、失うものさえ与えられぬ、這い上がれぬ、持たざるもの。そして、それを無敵の人と形容する軽薄な世を呪うしかない、そのカルマを考える。心が吼える。