電撃文庫でヒット作を多数出している編集者の自伝。確かな熱量と面白い!の気持ちと、高度なリーダビリティを合わせ持つ、一人の編集者の本でした。
細々とした編集の仕事を紹介するのではなく、メインを絞って、メソッド的なものを語る。楽しんで仕事をしていることがとても伝わってきた。本人としては「普通」のことを
...続きを読むしているつもりなのだろうけど、その根性と熱意は並大抵のものでない。すっきりメソッドとして書けるくらい、自らの仕事の柱を見据え、ブレないところが良い。確かな努力に裏打ちされた熱量が伝わってき、リーダビリティが非常に高い文章と相まって、まるでエンターテイメント小説のように読ませる。下手な小説よりも面白かった。
一読者としてみれば面白いつまらないと簡単に見捨ててしまうけれど、その一作を生み出すために、面白いと思った作者がいて、面白いと思った編集がいて、つまらないものを送り出そうと思って創る者はいないという言葉に気付かされた思いだ。エンターテイメントが溢れている世の中だからこそ、身に合わないものは簡単に捨ててしまえるし、文字を読み想像するという頭を使う読書に比べ、なにも考えず欲望のままポチポチとボタンを押し続ければいいソシャゲに楽に流れていくことは、身に覚えがある。
物語を面白いと思った過去の自分の気持ちを未来の少年少女に発信するために、今日も働いている。全身全霊で取り組んだ仕事で一喜一憂して、大ヒットを生み出して、世界中でファンの人が笑顔で好きだと言ったら、それはどれだけすごいことなんだろう。わくわくする。メディアミックスの最終目標はハリウッドなどと、目指す先からしてもうスケールが大きい。人の気持ちが、想いが、熱が入ったものは、わくわくさせてくれる。
2作目もあれば読んでみたい。