【備忘録】
ボスがお客様とのゴルフの接待を予定していた。だが予定の日の天気予報を見ると雨だった。
「じゃあ君が転機を変えるしかないね」
ジョークではなかった。
代案を4つ考えた。
1.当日に行ける別の方面のゴルフ場を探す。
2.少し遠い場所のゴルフ場を、前日からお客様にもお泊りいただき安全策とする。
3.たまたまそのお客様がスカッシュも楽しまれる方だったので、雨天の場合はそちら へ切り替えていただく。
4.日程変更を申し出る。
どんな時でもどんな場合にでも必ず「理想に限りなく近い代案」をあらかじめいくつも準備しておくことは、自らの身を助ける。
1を言われたら10の答えを用意しておくくらいの意識でいる。
出来ると言われるビジネスパーソンほど、この代案の引き出しをたくさん持っている。
より良いコミュニケーションは仕事の質を高める。
自分の考え、自分の希望、自分の意見を言葉に出して上司だけでなく、部下や同僚に伝えることで、相手との距離が縮まる。
周りの人間は以心伝心で他人の考えていることが分かる超能力者ではない。
自ら努力して言葉を紡がない限り、自分の考えや意図は伝わらない。
情報収集を心がける。
仕事をしながら、いつも耳を全方位に傾ける。
目は余すことなく、レーダーのようにあらゆるものを観察する。
分からなければすぐに調べる。
交渉では、安易な道に逃げない事。
最初から落としどころをちらつかせるようなやり方を避け、時間とリスクを十分に考慮したうえで、まずチャレンジをすることで、結果が違ってくる。
交渉ではチャレンジと切り札を分けて用意する。
社内の噂話は確実に耳に入れ、確実に口から漏らさない。
同僚が同業他社から、とても良い条件で転職のオファーをもらった。
ところがボスから「君のような優秀な社員が、なぜ僕ともっと話をする機会がなかったのかが不思議だ。オファーの内容は聞いている。出来る限りのことをするから、君がこの会社で明るい未来を約束されている、と言う事実を信じてほしい」と言われ、他にも数々の褒め言葉を受けた。
どれだけ自分が必要とされているかを延々と説明され、すっかり舞い上がってしまった。
後日、他の同僚からの助言から、約束したことを書面にしてほしいと上司に伝えると、上司は昇給の件をすぐにメールにして彼に送ってきた。
しかし役職の方は「調整中」とのことで文書にはならなかった。
おそらく上司が100パーセント彼を昇進させる気でいたら、何の躊躇もなく文書にしていた事だろう。
でも文書にしてしまったら、昇進しなかったときに、彼はその文書を持って会社やボスを訴えることも可能だ。
だから会社や上司としては100パーセントの確証がない限り、文章にして記録することはしなかった。
記録はいざという時の為、まさかの時の為の保険となるので習慣づける。
失敗したらまずいことになるから、メンツが立たなくなってしまうからとリスクを取れないのが日本人。
リスクを取れないのは、一人前のビジネスパーソンではない。
リスクを取らねばビジネスチャンスを失うと考えているのが外国人。
チャンスは、リスクを超えた先にある。
相手を慮ってNOと言わない日本人が多い。
NOと言わないばかりに、相手は時間を無駄にしてしまう。
ビジネスの場面では仕事をする人間として未熟であると映ってしまう。
NOをはっきり言うのは失礼にあたるのか。
そんなことはない。
言葉の使い方と態度でNOを伝える際の衝撃を和らげればいいだけのこと。
つまり同じNOを伝えるにしても、必要に応じた表情で言葉を選んで伝える。
「日本のあるレストランに行ったんだが、そこのセットメニューで、ご飯の上に肉料理が載っているのがあったんだよ。僕はご飯を食べる気分じゃなかったから、ご飯を抜いて肉料理だけを、と頼んだんだ。そうしたらウェイターがね、首をかしげて『それは難しい』って言ったんだよね。僕が『難しくなんかないよ、お皿にご飯を盛らなきゃいい、それだけだよ』と言うと、びっくりしてぼくの顔を見るんだ。この変なガイジンって感じで」
このやりとりは、最後には、お店の責任者を呼び出してもらうような事態にまで発展してしまった。
完璧を目指すために時間をかけるというのは通用しない。
なぜなら、完璧というのは、相手によって基準が違うから。
100点だと思って提出した書類も、上司から見れば、85点なんてことはざらにある。
だから自分の完璧ではなく、相手の満足した状態を目指す。
アグレッシブと言う言葉には、攻めの、積極的なというポジティブな意味と、「強引な、攻撃的な」というネガティブな意味がある。
なにかトラブルが起こると、日本人はとりあえず謝りがちだ。
外国社会においては「謝る=すべての非が自分にある」と認めたととらえられる。
日本のようにとりあえず相手の気持ちを落ち着かせるため、相手の気分を害したことを詫びるために、反射的に「申し訳ございません」と言うと、思わぬ結果を招く。
安易に漠然に謝るのではなく、「ご不自由をおかけしたことをお詫びします」「ご気分を害されたことをお詫びします」と理由をはっきりさせる。
「持ち時間は5分だ」と言う上司も少なくない。
「わかりました」と言うのは、さらに相手を怒らせる原因になる。
「最初からベストを尽くしますが、30分は必要です。ですが5分以内に必ず一度進捗状況をご報告いたします」などと相手の希望を尊重しながら、代案を提供する。
ここでも交渉術が試される。
in someone’s shoes
直訳すると誰かの靴を履いてみる。誰かの立場に立って考えるという意味。
相手の気持ちに寄り添う事で、自分の気持ちのおもむくままに突き進むのではなく、相手とともに歩むことができる。
すると効果的な話し合いになり、良い結果を出すができる。
そうなると、自然に相手に対する印象も変わる。
「難しい人」「怖い人」というのが「少し難しい人」「少し怖い人」、そしてそのうちに「ちょっと癖のある人」くらいのレベルにまで変わる。
100パーセント相手と同じ気持ちになることはできないが、寄り添う事は出来る。
人生でも仕事でも自分自身でいろいろと学んできているからこそ、相手の欠点にも寛容になれる。
自分の尺度だけで相手を計らない、そういった姿勢が度量の大きいリーダーを作り上げる。
自分が冷静に対処しているか、自分の感情をコントロールできているかをチェックする。
もし相手に感情的になりそうな場合は、その人を非難する前に「私は完璧な人間なのか」と自分に尋ねてみる。
そして同じ内容でなくとも、自分もミスすると少しでも思えたら、それを念頭に置いて相手を許容する。
相手が間違えていると思うなら、それをその人が受け入れやすいように説明、指導する。
毎日の小さなトレーニングが度量を広げていく。
固定観念を捨てて柔軟な交渉を試みる。
曇りのない目で物事を見る。自分が当たり前、常識と思っていることに、あらためて一度問いかけてみる。固定観念は視野だけでなく、可能性も狭める。
水鳥の足は水面下でバタバタ動いていても、そんなことを感じさせないくらい水の上では優雅だ。
いくつもの顔を使い分けるコツは、その一瞬一瞬の状況を的確につかむこと、話や交渉をする相手の気持ちに寄り添う事、そして、その時の状況下の自分の感情を完璧に殺すこと。
その場に応じた最適の顔で接することで、人間力が高まる。
たとえ、その日のどんなつらい思いをしていたり、その直前に頭に来ることがあったとしても、それらの感情はきちんと閉じ込める事。
仮面=顔を被るというのは、欺瞞をせよと言っているわけではない。
相手の気持ちに寄り添う事は、私はあなたの味方であると伝える最良のメッセージでもある。
ストリートスマートは日常や現実の世界で身を守るための術を、学校や学問ではなく、実践で身に着けている人を指すフレーズ。
それに対してアカデミックスマートは学校での勉強ができる人。
飛行機のファーストクラスのチケットはお金で買えても、そこにふさわしい品や格まで買えるわけではない。
品や格の基礎となる度量や威厳は、日々のたゆまぬ努力によってのみ、年月をかけて育まれ、身についていく