本書の内容だが、「知っておくべきだ!」という情報、加えて「現在の社会は何が“問題”?」と考える場合の入口や、鍵になる事柄が色々と示されていると思う。
題名に在るは「2021年の給与所得者の平均年収」であるそうだ。これを聞いて、「少し微妙な金額?」という程度に思った。
“微妙”と思ったのは、年間に「4
...続きを読む43万円」が使えるのなら、その収入を得ている本人が、仕事の上で問題が在るという程でもなく、例えば介護を要する身内が手近に在るというような課題も無く、子どもが在るのでもないような状態で、健康上の問題らしい問題も無い中、1人で収入の範囲の生活を送るのであれば「そんな感じか…」というように思える金額だ。が、往々にして在る状態、身内のこと、健康のこと、子どものことが在れば「多分、足りないであろう…」と思える金額だ。
そう思いながら本書を紐解き始めた。
本書ではこの「443万円」という収入の前後と見受けられる人達の様子のレポートが連なる。そして「443万円」という収入に届いていないと見受けられる人達の様子のレポートが在る。これは著者が取材して、方々で聴き取りをした話しを「1人称で語る文章」として綴ったモノになる。
人の数だけ、歓び、哀しみ、達成感、課題、安堵、不安、満足、不満、悩み等々の想いが溢れるのだと思うが、本書の人々の様子のレポートを読めば、「課題、不安、不満、悩み、哀しみ」が寧ろ溢れているというように感じざるを得なかった。
そのレポートの後、著者が抱き続けた問題意識と、レポートのような状況が生じて行く中での“問題”の指摘が為されている。読んでいて「30年間位の様子?何なんだ?!」という想いが込み上げざるを得なかった。
「世の中に必要である」とされるような、保育、看護、介護というような仕事に関して、“ブラック”と呼ばれる状況で働く人達の待遇は何時迄も改善されず、何時迄も業界の様子は向上していない。そういう特定業種に限らず、かなり幅広く“非正規雇用”が拡がり、何時迄も安定した勤務先や収入が得られない人が増え続けるばかりになっている。過去20年間程で、少し高収入な人達が増えている他方、低収入な人達も増えていて、“格差”が拡がり、克服し悪くなるばかりかもしれない状態になっている。或いは「中間的な」という人達の層、嘗て「総中流」という程度に表現されたような層というようなモノが「壊されてしまった?」というのが現況かもしれない訳だ。
そして本書では「何を如何やっても巧く行かず…」と「心が弱っている?」という層が意外に拡がってしまっていることも指摘されている。更に、そういうことも顧慮した就業支援のような取組が必要な筈であるとし、幾つかの好い感じの事例も紹介されていた。
極々個人的なことだが、自身のここまでの人生を少し振り返る。社会に出る少し前に「“新しい流れ”の最初になるか、“旧い流れ”の最後になるかという位置?」と漫然と思ったことが在った。結果的に?「“旧い流れ”の最後」という感じなのかもしれない。“新しい流れ”の必ずしも好ましくないような影響を免れたような様子だったかもしれない。と言って、凄く好かったのか否か、何となく判り悪いかもしれないとも思っている。が、現状では健康上の課題のようなモノが全く無いのでもないという中、「1人で収入の範囲の生活を送る」という様子で、とりあえず「“生”を謳歌」しているかもしれない様子だとは思っている。
極個人的な感覚については、それはそれとして、「問題が溢れている?」という様相、「長い間に傷口を広げるようなことばかりして来た?」という様相は知っておき、考える材料にすべきだと思う。そういう意味で本書に出くわして善かったと思っている。