当時は教会が政治との結びつきが強く、政治扇動の書として誤解されることを防ぐため、友人のモンテーニュがラ・ボエシの死後も発表を躊躇したという書籍。
人は力や謀略により強制的に服従することはあっても、強制されずとも自ら進んで権威に服従するのは何故か。この自発的隷従のメカニズムついて様々な考察を示し、最
...続きを読むも唾棄すべき悪徳として痛烈な批判を浴びせている。翻訳の絶妙さなのか、ラ・ボエシの批判的な文章が妙に強烈なのが印象的だった。
【一部引用】
彼らは強制されもせず、いかなる必要もないのに、圧政者に身を委ねた。私はこの民の歴史を読むと、きわめて大きな恨みの念を覚えずにはいられない。われながらまるで人間らしさを失って、それ以後彼らに訪れたかくも様々な災厄を喜びたい気持ちになるほどだ。
私は勇壮な人でも、高貴な生まれの人に語っているのでもない。ただ普通の常識ある人、さもなくばただ人間の顔を持つ人に対して語っている。こんなふうに生きるより悲惨なことがあるだろうか。自分では何も持たず、自分の幸福も自由も、身体も命も他人にゆだねるとは。
もう隷従はしないと決意せよ。逃れたいならば逃れたいと望むだけでよい。敵を突き飛ばせとか、振り落とせと言いたいわけではない。ただこれ以上支えずにおけばよい。
臆病と呼ばれるにも値せず、それにふさわしい卑しい名が見あたらない悪徳、自然がそんなものを作った覚えはないと言い、ことばが名づけるのを拒むような悪徳とは。