私の中でビスマルクは「ドイツ統一を推し進めた人物」というイメージがあったが、この本を読んで、一概にそうとは言えないのだということが分かった。
彼は生粋のプロイセン・ユンカーで、伝統に執着し、あくまでもプロイセンを大国とするために動いていた。
その手段としてドイツ・ナショナリズムを利用し、北ドイツに
...続きを読むおけるプロイセンの覇権を確立させることに成功したが、同時に、元々は意中になかったドイツ統一事業に手を染めることになっていく。
目的を達成するために利用したことで、逆に振り回されているようにも見える様子は、これまでの彼のイメージとは違っていた。
そして彼は「伝統」と「革新」という二つの要素を持ち合わせていたのだということを知った。
本書は、あとがきにあるように『一時期のように彼を弁護して著しく称揚することもしなければ、徒(いたずら)に批判して弾劾することもせず、最新の研究成果を踏まえつつ、一次史料に即して実証的かつ公平に論じながら、彼の実像あるいは等身大の「素」の姿を描くべく努めて』おり、フラットな立場からビスマルクを見ることができたように思う。
また、噛み砕いた解説により、読者が置いてけぼりにならず、初心者の私にも分かりやすかった。