いわゆる「増田レポート(地方消滅論)」には、個人的にも嫌悪感を抱いていて、そもそも増田氏編著になっている新書は、署名が伴っていない(執筆者が明らかにされていない)点で責任所在に思えるので読む気さえしない。
けれど一方で山下祐介氏の主張はすでに『限界集落の真実』で読んでいたので彼の反論本もとりあえず手
...続きを読むに取らず。
そんな中、代わりにと言っては何だけど、書店で目についてこの本を読むことにしたのだった。
結果的に、正解だった。
山下氏ほど文章に力が入っていないし、くどくどしくないので読み易い。それでいて、いくつかの先進的な事例(特にそれらのうち歴史的にも大事なもの)をカバーしているのみならず、過去の意義深い文献をかなり網羅的に引いていて、説得力がある。各地での参考にもなりそう。
農山村集落では、高齢者のなかで「継承への意識」が強く広がっていること。
でも自然災害(等)がきっかけで(一歩間違えると)「諦め」が広がり得ること。
地域づくりには内発性・総合性・革新性が求められること。
暮らしのモノサシ(交流・情報)、仕組み(自治)、カネと循環づくり(経営)がカギとなること。
用地協議や住宅建設さえ地域は担いうること。
地域づくり協力隊のような制度も、きっかけになり得ること。
移住トレンドが存在すること。
――といった、多くの示唆が得られた。
いずれにしても、「増田レポート」が地域に打撃を与えるようなことがないことを祈る。
繰り返すが、説得力ある一冊。