心がほんわーとした。昔の日本人って、貧しくても、心は豊かだったんだなと。今の私たちもしっかりしなきゃ、大切な物を失わないようにしなきゃと思った。
絵日記を書いた主人公の尾崎石城は、自分の身を省みずに藩に熱い思いを訴え、蟄居を申しつけられ、中級武士から大幅に家禄を減らされ、養子先からも離れ、妹夫婦の
...続きを読む家に世話になっている。それでも、友情、義理、なさねばならぬことなど人として大事なことを守りぬく毎日を送る。
彼の毎日は、友達との往来が盛んで、とても楽しそう。そして、閉門を言われても、それでもやってくる真の友達が多く、そんな自分を恵まれていると感じることのできる心の持ち主。義理の妹夫婦も、彼を厄介者扱いせず、家で一番の座敷を与え、気遣う。
晴れ着がないと格好が整わない日に、義理の弟を気遣って、数日前から仮病を装う石城。それに対して、なんとか晴れ着を調達する弟。
近所の身よりのない寺の住職が倒れた時に、みんなで対策を話し合い、貧しい中からもお金を工面したりと心温まる交流。
さらに、石城さん、飲みが大好きで、よく失敗をしてしまう。その様子も面白い。酔っ払いすぎて、友達の土屋に引っ張られて帰ったり、お寺の根太をぶち抜いてしまったり、気持ちよく詩吟を歌いながら帰り、その途中は歩きながら寝てしまい、土手に転げ落ちて、泥だらけ。格好悪いので、手拭いでほっ冠りしながら、近くの井戸で冬なのに、水を浴びる。そして走って帰り、おお寒いと言ったりするとこなんて、愉快以外の何物でもない。
それでも、ときどき、侍スピリッツを発揮する。飲み屋で隣席の町人に絡まれた時、石城が一括すると、ひるむ町人。同じく、酒場で隣の席が罪人を連れて休憩する役人だと分かると、役人の任務の大変さに思いを馳せると同時に気になって落ち着かないとかも人情味あふれて面白い。
それに、仲間もなかなか魅力的。すぐ裸になる和尚。勉強仲間でまじめな岡村甫山。年上で頼りになるが、のりもいい親友土屋。親しい仲だからか、友達同士で寝っ転がって本を読んだり、友達が勉強している脇に、炬燵にその子供と入ってくつろいだりと飾らなくていい関係が推測できてほほえましい。
届を出してしまった許嫁が身持ちが悪い娘だと分かり、周囲は反対。だけど、あんまり言いすぎてもかわいそうだから、悪評を抑える方向で協力し、しばらく見守ろうと書いてあったり、今と同じだなぁと思ったり。
お寺に頼まれて水仙の植え替えを手伝ったり、近所から苦情を言われて鶏をお寺に譲ったり、友達と散歩の出たり、独身の友人が面倒がってご飯を食べずにいるのを手伝って一緒にご飯を作ったりと当時の生活が分かる。