一言でいうと、中年の妻子持ちの男が、16歳の少女にのめりこみ破滅していくさまを描いた話だが、裏テーマは、性的魅力のない妻を持った妄想男の行く末、と読んだ。
(とはいえ、ロリータよりだいぶ以前のこの段階では作者が未成熟の女性に興奮する性向を隠したいがために性的魅力のない妻を利用した、とも読めるが、自分
...続きを読むの都合で前者と解釈することにする。)
妻/母を長いことやっている私は、いいお母さんだけれど日々の生活でもベッドの中でも大人しく、徹底的に退屈でセクシーじゃなく描かれている作中の妻を、反面教師とした。
妻/母を長いことやっている私はまた、主人公の男が、いけないとわかりながらも性的嗜好に翻弄されてあれよあれよと堕ちてゆく様を疑似体験し、自分の破滅願望をすんでのところで食い止めた。
妻/母を長いことやってきた私は、モラルというガラスの水槽に自分を閉じ込めていたとようやく気付いた。だからこの小説のようにモラルを蹴散らすような話が好きなんだとようやく理解した。
安心で退屈な家庭生活を長く続けるために、魔がさして破滅する前に、多少の波風~秘密とインモラルというスパイスを織りこんでゆく所存です。
ナボコフはほかに「ロリータ」と「絶望」を読んだが、妄想や変態性を、独創性あふれる空想を盛り込みながら、ごく客観的に描く、面白い人だと思う。酒を飲んでみたいと思う作家のひとりだ。