すっかりファンです。黒白のコントラストや繊細な絵柄が美しく、そこに目がいきがちだけれど、実はここまで〝人間〟を表現できる人も珍しいのではないかと思ってます。
若者特有の皮膚や骨の柔らかさまで伝わってくるだけでなく、キャラクターのポーズにも意味があり、指先まで演技しているので作品世界に入り込みやすい。
...続きを読むとはいえそれも表現法のひとつに過ぎず、きっと作者が表現したいことは、もっともっと深いところにあるんだろうなと思わされます。
どの作品も、どこかねじれた愛があって、そこが作者最大の持ち味。〝危なげな関係でありながら根底には深い愛情がある性表現〟が上手すぎるし、キャラクターの醜さや弱さを美しく昇華しているという意味でも、読後感は漫画というより文学作品や映画に近い気がする。ストーリー上、性の表現は欠かすことができないものの、BLファンだけで堪能するにはもったいないくらいの描写力。
ダークな雰囲気なのに、誰かが傷つくだけで終わったりしないので、人にもおすすめできる。独特の雰囲気ありつつ偏った愛情を表現してくれるスパナ作品が大好きです。
個人的には表題作よりも『箱の中のあおぞら』がツボでした。「浴衣を縫ったんです」のところ!素晴らしい。