社会学関連の学術書だと思い込んでたら、熱血教師の体験記ふうで、ちょっと期待はずれ。この手のノンフィクションなら、アメリカの著者がすでに多く書いているので。教育現場の崩壊とか、政策の不備とか、もっと深いところに突っ込んでくれているとよかった。
とはいえ、日本人でこのような経験をされる方はそういないし、
...続きを読むそれを日本人向けに日本語で伝えてくれる書物も皆無なので、そういう意味では非常に興味深い。自身や生徒たちをかなり美化しているのでは?と思われる部分もないことはないが、私自分もホームレスの人たちと接するボランティアをやっていたので、まったく異質の自分に彼らが心を開いてくれる瞬間のあの感激、というのは、共感できる。
普通、日本人には二つのタイプがある。1つは上流クラスに根付いた移民の子孫や企業から派遣された人、留学生など。彼らは「優秀な国民」という日本人のイメージにうまく乗っかり、仕事や学業に精出し、アメリカの抱える社会問題には無頓着である場合が多い。もう1つのタイプはわざわざ自分を「マイノリティーJap」と位置づけて、被差別者グループとアイデンティティを分かち合おうとする。著者は後者の傾向が強いかな。
ただ、どちらにしても、日本人というのは特殊な位置にいて、完全にグループに混ざることはできない。上流階級の日本人も、白人に混じるとコンプレックスを感じるし、マイノリティと混ざろうとする日本人も、ぎりぎりのところで相手がまったく違う世界に住んでいることを思い知らされ、壁の存在を認識する。
著者が、生徒たちを少しでも変えてやりたい、と思うのはすばらしいことだし、思うような結果が得られず逆恨みするのも理解できる。ただ、やはりどこかで線を引いて、相手のテリトリーを尊重しないと、お互いに傷つくことになるのでは?という疑問も残った。