2000年前に紡がれた、これは短編でありつつも緻密でおぞましく、逆転と認知の悲劇的なストーリーです。
辻褄があっているのか、疑問点を読み返して咀嚼してみたくなります。
最大の疑問は使者がオイディプス王に謁見した際、お互いにライオス殺害の現場に居ながらその時の場面について追求せず、それより遥か昔に両
...続きを読む足を拘束された子どもについて固執し続けたことと、使者が複数人の犯行と証言したことがうやむやにされたことです。使者が王を殺された現場にいながら王を助けられなかった言い訳で虚偽の報告をしたんでしょうけど、その一点を頼りにしていたオイディプス王なのでキチンと回収されないと読み手としてはしっくりこないです。
翻訳もギリシャ語を英語に訳したものからの日本語訳とはいえ、かなり原作に配慮しながら訳したものであるとのことで安心しました。
そもそも我が子を預言者の言いなりに殺してしまおうと思う母が悲劇の元凶ではあるが、フロイトが提唱した、男子には近親相姦の本能があるかもしれない(エディプスコンプレックスの語源とされるのだと思い当たる)恐ろしさとともに深く考えさせられるミステリーでした。