四人の執筆者たちが萩尾望都の作品をとりあげ、その魅力を語っています。また巻末には、「萩尾望都スペシャルインタビュー」が収録されています。
小谷真理が解説しているのは『トーマの心臓』です。小谷が主要なフィールドとしているフェミニズムとSFという二つの観点から考察をおこない、とくに美しい少年たちの物語
...続きを読むとしてえがかれたこの作品が、女性たちにどのように受け入れられたのかということが論じられています。
ヤマザキマリが解説しているのは『半神』と『イグアナの娘』です。おなじマンガ家としての立場から、表現技法などに立ち入った話がなされるのかと思っていたのですが、むしろ作品のテーマを掘り下げる議論が展開されています。
夢枕獏は『ポーの一族』をとりあげていますが、巻末のインタビューで萩尾自身が明かしているように、四十年ぶりに続編の執筆が再開されることになったきっかけを提供した人物ということもあって、この作品に対する愛があふれだしています。
中条省平は『バルバラ異界』をあつかっています。フランス文学の研究者でありマンガの評論・研究も手がけている著者だけに、この複雑なテーマをもつ作品をどのように読み解くのか、個人的にもっとも関心があったのですが、いくつかの解読のための切り口が示されているにとどまっている印象です。本格的な評論を執筆してくれることを待ちたいと感じました。