・「法」とは社会規範であり、その遵守につきそれが行われる社会から公的かつ外部的な強制を伴ったもの、というのが通説的な立場に基づく法の定義である。
今回紹介する「クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。」は大学の講義で用いてもよいくらい、理路整然と創作活動時に関わりのある権利や法律
...続きを読むについてまとめられている1冊だ。
さて、私は読んでいるうちに不思議とノスタルジーが沸いてきた。というのも、(文学部のくせに)大学時代はよく法律の授業を履修しており、久々に法律の本を読んだという感覚が芽生えたからだ。
本棚から大学時代のテキストを引っ張り出す。私はT教授の授業をよく履修していた。冒頭の定義は氏が作成したテキスト「法学の基礎」のp8から、「法の定義」を記した一文を引用したものである。なお、そのテキストは今風に言えば先生のセルフパブリッシング作品(※履修する学生しか買えない貴重な一冊。全32ページで500円!)のため、奥付が一切無かった。(この本を読んだ後に言うのもあれだが、引用の不備はお許し下さい…)
法律という概念は上記の通り、人と人との関係を良好に維持するために用いられるルール(=社会規範)だと定義されている。
昨今、創作活動というカテゴリーにおいて「これは違反では?」と指摘され、問題になるケースを多数みかけるようになった。
問題を起こす側も特徴的で、いわゆる「一般の人々」の行為が問題になっている点が興味深い。
それは残念な傾向である一方、創作活動に関する権利が「社会規範として守られるべきもの」「正しく用いていかなければならないもの」としての認識が、より広まっている事の裏返しとも言えるだろう。
また、創作活動が一部の人間に限られていた時代とは異なり、創造的な活動はより容易に、そして誰でもできるフェースに入っていることも示唆している。
故に、現在は自らを「クリエイター」と意識していない人々にも、本書で取り扱っている権利や法律との関係性が芽生えていく可能性は大いにありうる。
日々SNSで発表している文章や、エンターテイメントとして眺めている動画には、どんな権利が紐付いているのだろう?
そして、これらの文章や動画をそのまま発信/享受する事は、社会規範を維持することに貢献しているのだろうか?
そんな疑問を抱いた方は、ぜひとも本書を手に取り著作権や関連法を学んで欲しい限りである。
簡潔かつ多様にケースは例示されているので、良い手引となること間違いなしだ。
あと、個人的には敬愛する嘉門達夫先生が「替え歌を作る際、承諾のために関係各所に頭を下げている」のくだりには涙が止まりませんでした!