作品一覧 2023/04/14更新 社会契約論 ──ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ 試し読み フォロー 真理の語り手:アーレントとウクライナ戦争 試し読み フォロー ホモ・エコノミクス ──「利己的人間」の思想史 試し読み フォロー ミシェル・フーコー ――近代を裏から読む 試し読み フォロー 1~4件目 / 4件<<<1・・・・・・・・・>>> 重田園江の作品をすべて見る
ユーザーレビュー 社会契約論 ──ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ 重田園江 「社会契約」を根源的に考える 「社会契約」ー西洋哲学を貫く重要な概念で、この言葉に触れる事も多い。 しかしそれがどの様なものであり、その問題意識を明瞭に説明できるだろうか? 日本人には外来概念であるから、あやふやなままに、理解したものとしている事が多いのではないだろうか? 社会が見通しにくい今こそ、立ち返ってみる価値があると思う...続きを読む。良書である。 コヌカイワシ ホモ・エコノミクス ──「利己的人間」の思想史 重田園江 フーコーの「権力論」や「統治論」などの研究者が、「ホモ・エコノミクス」を系譜学的に検討したもの。 といっても、これは専門書ではなく新書レベルの難易度で一般の人でも読めるレベルで書かれている。というか、著者にとっても専門分野でない「近代経済学」の歴史を自身で紐解きながら、模索しながら、テーマを探求し...続きを読むている感じ。 どうして、著者がこのテーマについて考え始めたかというと、著者の専門のフーコーの「生政治の誕生」における新自由主義の議論、そして、近年の新自由主義化した世界への疑問があってとのこと。その辺りは、私もほぼ同じテーマを考えていたところで、「人的資本」経営などの議論を踏まえて、ピッタリと今の私の問題意識とあっている。 本は、3部に分かれていて、第1部はアダム・スミスに至る前の道徳哲学の議論、第2部は限界革命による経済学の科学化のあたり、第3部はシカゴ学派による経済以外の現象も経済学的に取り扱うようになるあたりとなっている。 私の理解では、ホモ・エコノミクスは、概ね大きく3つの仮定、つまり、 ① 人は自己の利益を最大化を目指す利己的な存在である ② 人はすべての入手可能な情報に基づき判断を行う ③ 人はすべての選択肢を比較考慮して、合理的な意思決定を行うという といったことが基本だと思っているが、この本では①の部分を中心に議論を進めている。 そのあたりのところが、読んでいるときは、わからなくて、このトピックを議論するなら、②について、取引コスト、情報コストなどを取り入れた議論とか、③について、限定合理性や行動経済学の議論を触れなくていいのか?とかつい思ってしまう。 また、新自由主義的なホモ・エコノミクスを問題とするのなら、アダム・スミスやハイエク、フリードマンの議論があまり紹介されていないのは気になるし、②と③だけでなく①の仮定も傍に置いて、マクロレベルでの議論を展開したケインズについても言及されていないのも気になる。 そんなことを思いつつざっと読んだが、経済学に詳しい人は、もっといろいろ突っ込むところは多いのではないだろうか? にもかかわらず、この本の議論は、とても刺激であった。(ちなみに②と③に関するところは、この本のテーマからははずした旨の説明が最後の方にあった) 著者は、第2部の限界革命の部分に一番力が入っていて、ここで科学というか、数学、物理学の手法を取り入れることで経済学が社会科学の中で、最も科学的な分野に見えるようになったこと。だが、違う分野のツールを導入することは本来はアナロジーのようなものであって、本当の問題を覆い隠してしまうことを指摘しようとしている。理論を単純化するための仮定でしかないホモエコノミクスが自然科学を装うことでちゃんとした科学に見えるようになるということだ。 そのことによって、本来、単純化のための仮定でしかなかったホモ・エコノミクス(自己利己を追求する人間)が、「人間ってまあそんなものだよね」という現実理解になり、さらには「自己責任のもとにちゃんと自己利益を追求できるようになる必要がある」という規範的なものにすらなっていくという話しだ。 ある意味、ここまで私が考えていたことと、ニアリー・イコールだ。私がこれまで知らなかったいろいろな文献を紹介いただいて、ありがとうという感じだった。 で、私が一番、刺激を受けたのは、第3部の後半、公共選択の議論の部分。公共選択は、一時、興味を持って学んでいた領域で、私の中では、それは新自由主義とは別のものとして理解していた。 つまり、「個人の経済的な自己利益を社会レベルで実現するために個人や組織が行動する」という前提は必ずしも公共的選択論にはないと思っていて、多様な政治的な意見(経済的な利益に関するものも含まれるが、例えば宗教的な信念とか、人種や性差別に関する意見などもある)があるなかで、どのような社会的選択がなされるのか、あるいはなされるべきなのかということに関する研究だと思っている。 が、にもかかわらず、それが個人の自己利益最大化のホモ・エコノミクスと組み合わされると、新自由主義的な文脈の中で、小さい政府論に向けて、公共セクターの民営化への理論的な根拠になった。という指摘には、かなり説得されてしまった。(これは著者の見解というより、コリン・ヘイの見解のようだが) あと、資本主義の起源に「プロテスタントの倫理」を置いたウェーバーの議論は、イデオロギー的であり、資本主義の起源には奴隷労働、マルクス用語で言えば本源的蓄積という原罪があったという指摘もその通りだと思う。(これは、エリック・ウィリアムズの議論か) ということで、新自由主義の問題について、理解を深めるために、これから読むべき本のリストが手に入った感じである。(また積読が増えそうだが) Posted by ブクログ ミシェル・フーコー ――近代を裏から読む 重田園江 フーコーにフォーカスした新書は、中山元氏の『フーコー入門』、慎改氏の『ミシェル・フーコー 自己から脱け出すための哲学』、箱田氏の『ミシェル・フーコー 権力の言いなりにならない生き方』があるが(内田氏の『フーコー 主体の系譜学』は現在講談社学術文庫化)、そのなかでもっとも彼のたくらみに触れやすい書籍...続きを読むだと思う。 フーコーの書籍を「読む」ことに重きを起き、そこから彼の思想を他の書籍なども引きながら紹介していく本書は、後半になるにつれて著者のギアがあがっている印象はあるが、ライトな書き口で読みやすかったし、唸らされた。 現代社会が大きな監獄に見えてくるので、漠然とした生きづらさを抱えている人はその根本要因が言語化されていて気持ちいいかも。 Posted by ブクログ ホモ・エコノミクス ──「利己的人間」の思想史 重田園江 この著作の肝である第二部は、微積分の知識が無さすぎるため理解が十分ではないが、再読して理解を深めたい。 著者の問題意識に強く共感する。 Posted by ブクログ 社会契約論 ──ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ 重田園江 解釈としてまずいところもあるのかもしれないけど、哲学系中上級読みものとして完成されていると思った。引用が豊富で手探りで哲学書読んでく感じがありありと示されていて、ルソーのとこで挫折してしまうのもいい。 Posted by ブクログ 重田園江のレビューをもっと見る